インバウンド消費が国内日本人を上回る県は3つだけ。東京は2.3倍、最下位の島根は1.3%。

インバウンド消費が国内日本人を上回る県は3つだけ。東京は2.3倍、最下位の島根は1.3%。
「インバウンド」「観光大国・日本」という言葉が、ここ数年のニュースで連日登場する。
ところが、観光庁の都道府県別集計を見ると、訪日外国人観光客(以下、インバウンドと記載)の消費額が国内日本人の旅行消費を上回っている県は、たった3つしかない。東京(226.2%)、大阪(174.2%)、京都(106.4%)。残り44県では、観光経済を支えているのは依然として国内日本人だ。
全国合計では国内日本人の旅行消費が18.4兆円、インバウンド消費が8.6兆円。比率にすると47.1%で、まだ日本人が観光経済の半分以上を占めている。
最下位の島根県は、インバウンド消費が国内日本人の1.3%(インバウンド23億円 vs 国内1,699億円)にとどまる。福井1.5%、福島2.3%、群馬2.8%と、地方ほどインバウンド依存は低い。

数字の前に:データの定義と年度の違い
このランキングは、2つの観光庁調査の都道府県別集計を比較している。
国内日本人の旅行消費は「旅行・観光消費動向調査」の2024年年間値、インバウンドの消費は「インバウンド消費動向調査」の2025年年間値。両調査は年度が1年ずれているため、厳密には「同じ年の比較」ではない。ただし観光業の構造的な比率を見るには十分参考になる。
両者を県別に並べて、比率=(インバウンド消費)÷(国内日本人消費)×100% で計算した。値が100%を超えると「インバウンド > 国内」、100%未満は「国内 > インバウンド」を意味する。沖縄県は両調査とも対象に含まれている。
東京のインバウンド消費は32,867億円、国内日本人の2.3倍
東京都はインバウンド大国・日本の象徴的な県で、インバウンド比率は226.2%。インバウンド客が東京で2089万人訪れ、3兆2,867億円を使った(2025年)。一方、国内日本人の東京旅行消費は2024年で1兆4,533億円。差は2.3倍。
| 指標 | インバウンド(2025年) | 国内日本人(2024年) | 比率 |
|---|---|---|---|
| 訪問者数 | 2,089万人 | 5,695万人 | 36.7% |
| 消費単価 | 15.73万円/人 | 2.55万円/人 | 6.2倍 |
| 消費額 | 32,867億円 | 14,533億円 | 226.2% |
訪問者数では国内日本人がインバウンド客の2.7倍多いが、消費単価はインバウンド客が日本人の6.2倍。「数で日本人、金額でインバウンド客」という構造が、東京の観光経済を作っている。
大阪174%・京都106%が続く、インバウンド逆転は3県のみ
東京以外でインバウンド比率が100%を超えるのは大阪府と京都府。
| 順位 | 都道府県 | インバウンド消費 | 国内消費 | 比率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 32,867億円 | 14,533億円 | 226.2% |
| 2位 | 大阪府 | 16,688億円 | 9,580億円 | 174.2% |
| 3位 | 京都府 | 6,802億円 | 6,391億円 | 106.4% |
| 4位 | 福岡県 | 4,728億円 | 5,667億円 | 83.4% |
| 5位 | 愛知県 | 2,710億円 | 5,394億円 | 50.2% |
大阪はインバウンド1兆6,688億円 vs 国内9,580億円で1.74倍。京都はインバウンド6,802億円 vs 国内6,391億円で1.06倍。京都はインバウンドと国内がほぼ拮抗していて、わずか411億円差でインバウンドが上回っている。
4位以降は国内がインバウンドを上回る。福岡83.4%、愛知50.2%、沖縄37.6%、北海道33.6%。これらの県はインバウンドも多いが、国内日本人の旅行消費がそれ以上にあるという構図。
北海道・沖縄は地方型観光地として独特の構造
インバウンド比率が30%台の北海道(33.6%)と沖縄(37.6%)は、観光地として有名な県だが、消費の主体はあくまで国内日本人。
| 都道府県 | インバウンド | 国内 | 比率 | インバウンド単価 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 4,512億円 | 13,440億円 | 33.6% | 14.99万円/人 |
| 沖縄県 | 2,892億円 | 7,688億円 | 37.6% | 12.56万円/人 |
両県ともインバウンド客の消費単価は10万円超で、東京(15.73万円)に次ぐ高水準。それでもインバウンド比率が低いのは、国内日本人の観光客数が圧倒的に多いから。北海道は国内3,123万人、沖縄は969万人と、地方型のリゾート観光が国内市場を厚く持つ。
国内消費単価でも沖縄は7.93万円/人で全国1位、北海道は4.30万円/人で全国2位。離島・遠隔地ほど滞在が長く、消費単価が積み上がる構造が見える。
47県のうち40県はインバウンド比率30%未満
47県全体を見ると、インバウンド比率30%以上の県は東京・大阪・京都・福岡・愛知・沖縄・北海道の7県のみ。残り40県はインバウンド比率30%未満で、国内日本人が観光経済の主役。
下位10県は次の通り。
| 順位 | 都道府県 | インバウンド | 国内 | 比率 |
|---|---|---|---|---|
| 38位 | 徳島県 | 34億円 | 673億円 | 5.0% |
| 39位 | 山口県 | 93億円 | 2,001億円 | 4.6% |
| 40位 | 秋田県 | 45億円 | 1,222億円 | 3.7% |
| 41位 | 栃木県 | 170億円 | 4,875億円 | 3.5% |
| 42位 | 三重県 | 143億円 | 4,337億円 | 3.3% |
| 43位 | 高知県 | 31億円 | 1,002億円 | 3.1% |
| 44位 | 群馬県 | 111億円 | 3,975億円 | 2.8% |
| 45位 | 福島県 | 95億円 | 4,145億円 | 2.3% |
| 46位 | 福井県 | 37億円 | 2,480億円 | 1.5% |
| 47位 | 島根県 | 23億円 | 1,699億円 | 1.3% |
最下位の島根県はインバウンド23億円・国内1,699億円で比率1.3%。1位東京(226.2%)の174分の1の比率。「インバウンド」という言葉が均等に届いているわけではないことが、数字で分かる。

全国合計では国内日本人18.4兆円、インバウンド8.6兆円で日本人主導
全国合計で見ると、国内日本人の旅行消費は18.4兆円、インバウンドの消費は8.6兆円。比率は47.1%で、インバウンドが国内の半分弱にとどまる。
「インバウンド消費5兆円超え」と報道される数字は2025年でも8.6兆円規模で、観光経済の半分超の主役は依然として日本人国内旅行。ただし都市部(東京・大阪・京都)では構造が完全に逆転していて、インバウンド客の消費が観光経済の中心になっている。
これは「インバウンド時代」と「日本人観光客の時代」が、地理的に分割されている状態と読める。3大都市はインバウンド依存型、地方44県は国内市場依存型。同じ「観光業」と一括りにしても、県によって商売の相手が全く違う。
観光経済の地図は「都市3県+地方44県」で塗り分けられる
47都道府県の観光消費構造をインバウンド比率で見ると、都市集中の現実がくっきり浮かび上がる。
- インバウンド逆転県(3県):東京226.2% / 大阪174.2% / 京都106.4%
- インバウンド比率高め(4県):福岡83.4% / 愛知50.2% / 沖縄37.6% / 北海道33.6%
- 国内日本人主導(40県):インバウンド比率30%未満。観光経済の8割以上が日本人客
「インバウンドが観光業を支えている」という言説は、東京・大阪・京都の都市3県では正しいが、残り44県では半分以下の事実しか説明していない。日本の観光業の地図は、都市部のインバウンド依存と地方の国内日本人依存で塗り分けられている。
全47都道府県 インバウンド比率(インバウンド消費/国内日本人消費)ランキング
| 順位 | 都道府県 | インバウンド消費 | 国内消費 | 比率 | 順位 | 都道府県 | インバウンド消費 | 国内消費 | 比率 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 東京都 | 32,867 | 14,533 | 226.2% | 25 | 長野県 | 875 | 7,063 | 12.4% | |
| 2 | 大阪府 | 16,688 | 9,580 | 174.2% | 26 | 宮城県 | 475 | 4,331 | 11.0% | |
| 3 | 京都府 | 6,802 | 6,391 | 106.4% | 27 | 静岡県 | 696 | 7,948 | 8.8% | |
| 4 | 福岡県 | 4,728 | 5,667 | 83.4% | 28 | 鹿児島県 | 184 | 2,199 | 8.4% | |
| 5 | 愛知県 | 2,710 | 5,394 | 50.2% | 29 | 新潟県 | 231 | 2,921 | 7.9% | |
| 6 | 沖縄県 | 2,892 | 7,688 | 37.6% | 30 | 山形県 | 148 | 1,875 | 7.9% | |
| 7 | 北海道 | 4,512 | 13,440 | 33.6% | 31 | 岩手県 | 106 | 1,567 | 6.8% | |
| 8 | 奈良県 | 367 | 1,296 | 28.3% | 32 | 鳥取県 | 60 | 914 | 6.6% | |
| 9 | 広島県 | 832 | 3,155 | 26.4% | 33 | 長崎県 | 185 | 2,862 | 6.5% | |
| 10 | 山梨県 | 797 | 3,318 | 24.0% | 34 | 茨城県 | 157 | 2,572 | 6.1% | |
| 11 | 神奈川県 | 2,069 | 8,732 | 23.7% | 35 | 愛媛県 | 72 | 1,188 | 6.0% | |
| 12 | 千葉県 | 2,763 | 11,832 | 23.4% | 36 | 滋賀県 | 88 | 1,526 | 5.8% | |
| 13 | 香川県 | 351 | 1,540 | 22.8% | 37 | 宮崎県 | 76 | 1,357 | 5.6% | |
| 14 | 岐阜県 | 549 | 2,988 | 18.4% | 38 | 徳島県 | 34 | 673 | 5.0% | |
| 15 | 石川県 | 446 | 2,557 | 17.5% | 39 | 山口県 | 93 | 2,001 | 4.6% | |
| 16 | 大分県 | 443 | 2,804 | 15.8% | 40 | 秋田県 | 45 | 1,222 | 3.7% | |
| 17 | 兵庫県 | 845 | 5,817 | 14.5% | 41 | 栃木県 | 170 | 4,875 | 3.5% | |
| 18 | 埼玉県 | 337 | 2,324 | 14.5% | 42 | 三重県 | 143 | 4,337 | 3.3% | |
| 19 | 富山県 | 147 | 1,071 | 13.7% | 43 | 高知県 | 31 | 1,002 | 3.1% | |
| 20 | 青森県 | 194 | 1,420 | 13.7% | 44 | 群馬県 | 111 | 3,975 | 2.8% | |
| 21 | 佐賀県 | 121 | 890 | 13.6% | 45 | 福島県 | 95 | 4,145 | 2.3% | |
| 22 | 熊本県 | 343 | 2,583 | 13.3% | 46 | 福井県 | 37 | 2,480 | 1.5% | |
| 23 | 和歌山県 | 253 | 1,992 | 12.7% | 47 | 島根県 | 23 | 1,699 | 1.3% | |
| 24 | 岡山県 | 227 | 1,820 | 12.5% |
注:消費額の単位は億円。インバウンド消費は2025年年間値(観光庁「インバウンド消費動向調査」)、国内消費は2024年年間値(観光庁「旅行・観光消費動向調査」)。年度が1年異なる点に注意。
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