日本酒は新潟、焼酎は鹿児島、ビールは東京。主要8種の酒の覇者は6県に分かれていた。

日本酒は新潟、焼酎は鹿児島、ビールは東京。主要8種の酒の覇者は6県に分かれていた。
「日本酒なら新潟」「焼酎なら鹿児島」と言われれば、多くの人が「だろうな」と納得する。
ところが、国税庁が毎年公表する「酒のしおり」(成人1人当たりの酒類販売数量、令和6年版・2022年度)から主要8種類(清酒・焼酎乙類・焼酎甲類・ビール・ワイン・ウイスキー・リキュール・発泡酒)を並べてみると、覇者の県が6県にバラバラに分かれていることが分かる。
清酒1位は新潟県の8.33L、単式蒸留焼酎(本格焼酎)1位は鹿児島県の27.13L。ここまでは想像通り。
ビール1位は東京都の33.71L。ウイスキー1位は東京都の2.79L。果実酒(ワイン)1位も東京都の8.89L。東京は3冠。
さらに、リキュール1位は青森県の30.91L、発泡酒1位は高知県の14.66L、連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)1位は三重県の6.75L。「日本の酒の地図」は6県に塗り分けられていた。
合計1位は東京都の102.88Lで、全国平均74.43Lの1.38倍。最下位の滋賀県55.42Lの1.86倍にあたる。

数字の前に:「販売数量」は「県民が飲んだ量」ではない
このランキングを読む前に、ひとつ重要な前提を共有する。
国税庁「酒のしおり」の数字は、各都道府県内で販売された酒類の数量を、その県の成人人口で割った値。住民が実際に飲んだ量ではない。
つまり、飲食店・接待・出張需要が多い都市では、住民が飲まなくても販売量が膨らむ。逆に、地酒文化が強い県では、住民の地産地消が販売量に直結する。本記事では「東京」のような業務用が乗る県と、「新潟」「鹿児島」のような地酒文化が直結する県の両方が混在することを、念頭に置いて読み進めてほしい。
なお、沖縄県は本調査の対象外(泡盛は別統計)のため、本記事は46県のランキング。年度は2022年度(令和4年度)。
清酒の覇者は新潟8.33L、焼酎乙類は鹿児島の27.13L
定説がそのまま数字に表れる2種から始める。
| 酒類 | 1位 | 値 | 全国平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 清酒 | 新潟県 | 8.33L | 4.21L | 1.98倍 |
| 単式蒸留焼酎(焼酎乙類) | 鹿児島県 | 27.13L | 4.45L | 6.10倍 |
清酒は新潟県の8.33Lで、全国平均4.21Lの約2倍。2位秋田6.91L、3位山形6.10L、4位福島6.01L、5位石川5.97L。米どころ・酒どころとして名高い「東北・北陸の日本海側」が上位を独占し、新潟がその筆頭にいる構図。
単式蒸留焼酎(本格焼酎)は鹿児島県の27.13Lで、全国平均4.45Lの6.10倍。2位宮崎15.02L、3位大分8.10L、4位熊本7.70L、5位福岡6.23L。九州が上位を独占し、鹿児島が2位宮崎の1.81倍で別格の1強。芋焼酎の本場という定説が、消費の数字でもくっきり表れている。
ビール・ウイスキー・果実酒は東京3冠、業務用都市の力
意外なのは東京都が3種類の酒で1位を取っている点。
| 酒類 | 1位(東京都) | 値 | 全国平均 | 倍率 | 2位 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビール | 東京都 | 33.71L | 18.60L | 1.81倍 | 北海道23.96L |
| 果実酒(ワイン) | 東京都 | 8.89L | 2.59L | 3.43倍 | 山梨県8.43L |
| ウイスキー | 東京都 | 2.79L | 1.63L | 1.71倍 | 山梨県2.77L |
ビールは東京33.71Lで、2位北海道23.96L・3位富山23.96L・4位大阪23.73Lと続く。サラリーマンの仕事帰りの一杯、接待、出張中の飲食店需要が、人口集中する東京の販売量を押し上げているとみられる。
ワインは2位の山梨県(8.43L)と僅差ながら、東京が1位。山梨は国内ワインの一大産地としてのイメージが強いが、販売数量ベースでは東京(飲食店・専門店需要)が上回る構図。一方で、人口比で山梨が東京に肉薄するのは、ワイナリーの地元消費の厚みがあるとみられる。
ウイスキーも東京2.79L・山梨2.77Lで僅差。山梨はサントリー白州蒸溜所の地元で、国内ウイスキーのメッカの一つ。3位は青森県の2.25L、4位大阪2.12L、5位宮城2.10Lで、地理的に分散している。
リキュールは青森30.91L、発泡酒は高知14.66L
東京が3冠を取った一方で、地方県が独自の酒類で1位を取っているケースもある。
| 酒類 | 1位 | 値 | 全国平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| リキュール | 青森県 | 30.91L | 22.18L | 1.39倍 |
| 発泡酒 | 高知県 | 14.66L | 6.01L | 2.44倍 |
リキュールは青森県の30.91Lで全国1位。2位秋田30.10L、3位岩手29.06L、4位富山27.43L、5位北海道26.33L。北東北・北陸の寒冷地が上位を占める。「リキュール」はチューハイ・カクテル・薬味酒など幅広い分類を含み、果実系・茶系のチューハイ缶も統計上ここに含まれる。
発泡酒は高知県の14.66Lで全国平均の2.44倍。2位和歌山9.95L、3位富山8.98L、4位宮崎8.51L、5位熊本8.21L。高知は土佐の酒文化(盃の返杯文化「べく杯」など)が知られる「酒どころ」で、合計でも全国5位(91.86L)。発泡酒は手軽な大衆酒の代表格で、高知の酒席文化との相性が表れている可能性がある。
連続式蒸留焼酎の1位は三重県の6.75L、九州ではない
「焼酎」と聞けば多くの人が九州を思い浮かべるが、焼酎には製法による2種類がある。本格焼酎(単式蒸留・乙類)と連続式蒸留(甲類)で、後者は1位の県が違う。
| 酒類 | 1位 | 値 | 全国平均 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 連続式蒸留焼酎(焼酎甲類) | 三重県 | 6.75L | 2.83L | 2.39倍 |
連続式蒸留焼酎は三重県の6.75Lで、2位北海道5.88L、3位秋田5.64L、4位青森5.54L、5位山形5.12L。北日本と三重が上位に並ぶ構図で、九州勢は影が薄い(鹿児島は本格焼酎で別格1位だが、甲類では中位)。
連続式焼酎は無色透明・クセのない蒸留酒で、チューハイ素材・果実酒の希釈ベース・ホッピーなどに使われる。三重県には四日市の宮崎本店「キンミヤ」をはじめ、甲類焼酎の主要メーカーが集中しており、地元での流通シェアの厚みが販売数量に表れているとみられる。「焼酎」と一括りに語ると、本格焼酎(九州)と甲類(三重・北日本)で全く違う地図が出ることが分かる。

酒類消費合計1位は東京の102.88L、最下位の1.86倍
最後に、酒類14種類すべてを足した合計(合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒も含む)を見る。
| 順位 | 都道府県 | 合計(L) | 全国平均比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 102.88 | 1.38倍 |
| 2位 | 富山県 | 96.59 | 1.30倍 |
| 3位 | 青森県 | 94.14 | 1.27倍 |
| 4位 | 秋田県 | 91.94 | 1.24倍 |
| 5位 | 高知県 | 91.86 | 1.23倍 |
| 46位 | 滋賀県 | 55.42 | 0.74倍 |
東京都は102.88Lで全国1位、最下位の滋賀県(55.42L)の1.86倍。全国平均は74.43Lで、東京はその1.38倍にあたる。
ただし冒頭で述べたとおり、東京の数字には飲食店・接待・出張需要が大量に乗る。住民の飲酒文化を反映した「個人消費型」の県としては、富山・青森・秋田・高知あたりが上位に並ぶ。富山はリキュール4位・スピリッツ等1位・ビール3位・発泡酒3位と「万能型」、青森はリキュール1位・ウイスキー3位、高知はビール5位・発泡酒1位・スピリッツ等5位と、それぞれ独自の「県民酒」が浮かび上がる。
最下位の滋賀県は、酒類14種のいずれもおおむね中位以下にとどまる。県内に酒造メーカーは多いが、人口あたり販売量では全国最下位という結果になっている。
「販売量」と「消費量」、地酒文化と業務用の重ね合わせ
「酒のしおり」の数字は、業務用込みの販売数量を成人人口で割ったもの。地酒文化が県内で完結する県(新潟の清酒・鹿児島の焼酎乙類・三重の連続式焼酎)と、業務用が大量に乗る都市(東京のビール・ウイスキー・果実酒)が、同じランキング表に並ぶ。
それでも主要8種類を並べると、日本の酒の地図が6県(新潟・鹿児島・東京・三重・青森・高知)に塗り分けられているように見える。1県が主要酒類を制しているのではなく、地理・気候・歴史・産業構造が組み合わさって、それぞれの「覇者」が決まっている構図だ。
なお、14種類全体(合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒も含む)に範囲を広げると1位県は12県に分散する。本記事は主要8種類にスコープを絞り、メインのストーリーを描いた。
なお、沖縄県は本調査の対象外で、泡盛などの主要酒類は別統計の管轄。本記事のランキングは46県分。沖縄を含めた全国の酒の地図を描くには、別途統計の補完が必要になる。
主要8種類 × 主要県別の販売数量
主要11県(合計上位の代表8県+ワイン産地の山梨+焼酎甲類1位の三重+合計最下位の滋賀)について、主要8種類と合計の販売数量を一覧で示す。単位はL/年/成人1人。
| 県 | 清酒 | 焼酎乙類 | 焼酎甲類 | ビール | ワイン | ウイスキー | リキュール | 発泡酒 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 4.38 | 2.96 | 4.54 | 33.71 | 8.89 | 2.79 | 26.00 | 5.52 | 102.88 |
| 富山県 | 5.58 | 3.28 | 3.30 | 23.96 | 2.39 | 1.81 | 27.43 | 8.98 | 96.59 |
| 青森県 | 5.86 | 3.01 | 5.54 | 20.90 | 2.65 | 2.25 | 30.91 | 7.49 | 94.14 |
| 秋田県 | 6.91 | 2.48 | 5.64 | 21.48 | 2.20 | 2.04 | 30.10 | 6.08 | 91.94 |
| 高知県 | 4.20 | 4.09 | 2.74 | 22.86 | 1.72 | 1.32 | 24.39 | 14.66 | 91.86 |
| 鹿児島県 | 1.08 | 27.13 | 1.47 | 14.45 | 2.16 | 1.34 | 20.88 | 7.73 | 88.79 |
| 宮崎県 | 1.95 | 15.02 | 1.28 | 20.70 | 2.16 | 1.55 | 23.60 | 8.51 | 88.83 |
| 新潟県 | 8.33 | 2.41 | 4.16 | 20.70 | 2.33 | 1.73 | 25.80 | 5.92 | 83.50 |
| 山梨県 | 3.97 | 3.50 | 3.21 | 18.73 | 8.43 | 2.77 | 19.40 | 4.28 | 74.09 |
| 三重県 | 3.56 | 3.29 | 6.75 | 15.64 | 1.80 | 1.10 | 18.30 | 4.47 | 64.72 |
| 滋賀県 | 3.85 | 2.90 | 1.60 | 12.36 | 1.51 | 1.12 | 18.08 | 3.77 | 55.42 |
注:本表の数字は本文中の主要県のみ抜粋。「焼酎乙類」=単式蒸留焼酎、「焼酎甲類」=連続式蒸留焼酎、「ワイン」=果実酒。8種類のほか、合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒を含めた14種類すべての合計値が「合計」列。
もっと詳しく
データ出典: 国税庁「酒のしおり 令和6年版」(2022年度・成人1人当たりの酒類販売数量表)(沖縄県は本調査対象外、46県分)



