ものがたり
2022年度

日本酒は新潟、焼酎は鹿児島、ビールは東京。主要8種の酒の覇者は6県に分かれていた。

公開日: 2026-05-05
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日本酒は新潟、焼酎は鹿児島、ビールは東京。主要8種の酒の覇者は6県に分かれていた。

日本酒は新潟、焼酎は鹿児島、ビールは東京。主要8種の酒の覇者は6県に分かれていた。

「日本酒なら新潟」「焼酎なら鹿児島」と言われれば、多くの人が「だろうな」と納得する。

ところが、国税庁が毎年公表する「酒のしおり」(成人1人当たりの酒類販売数量、令和6年版・2022年度)から主要8種類(清酒・焼酎乙類・焼酎甲類・ビール・ワイン・ウイスキー・リキュール・発泡酒)を並べてみると、覇者の県が6県にバラバラに分かれていることが分かる。

清酒1位は新潟県の8.33L、単式蒸留焼酎(本格焼酎)1位は鹿児島県の27.13L。ここまでは想像通り。

ビール1位は東京都の33.71L。ウイスキー1位は東京都の2.79L。果実酒(ワイン)1位も東京都の8.89L。東京は3冠。

さらに、リキュール1位は青森県の30.91L、発泡酒1位は高知県の14.66L、連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)1位は三重県の6.75L。「日本の酒の地図」は6県に塗り分けられていた。

合計1位は東京都の102.88Lで、全国平均74.43Lの1.38倍。最下位の滋賀県55.42Lの1.86倍にあたる。

日本の酒の覇者マップ:6県に分散

数字の前に:「販売数量」は「県民が飲んだ量」ではない

このランキングを読む前に、ひとつ重要な前提を共有する。

国税庁「酒のしおり」の数字は、各都道府県内で販売された酒類の数量を、その県の成人人口で割った値。住民が実際に飲んだ量ではない。

つまり、飲食店・接待・出張需要が多い都市では、住民が飲まなくても販売量が膨らむ。逆に、地酒文化が強い県では、住民の地産地消が販売量に直結する。本記事では「東京」のような業務用が乗る県と、「新潟」「鹿児島」のような地酒文化が直結する県の両方が混在することを、念頭に置いて読み進めてほしい。

なお、沖縄県は本調査の対象外(泡盛は別統計)のため、本記事は46県のランキング。年度は2022年度(令和4年度)。

清酒の覇者は新潟8.33L、焼酎乙類は鹿児島の27.13L

定説がそのまま数字に表れる2種から始める。

酒類 1位 全国平均 倍率
清酒 新潟県 8.33L 4.21L 1.98倍
単式蒸留焼酎(焼酎乙類) 鹿児島県 27.13L 4.45L 6.10倍

清酒は新潟県の8.33Lで、全国平均4.21Lの約2倍。2位秋田6.91L、3位山形6.10L、4位福島6.01L、5位石川5.97L。米どころ・酒どころとして名高い「東北・北陸の日本海側」が上位を独占し、新潟がその筆頭にいる構図。

単式蒸留焼酎(本格焼酎)は鹿児島県の27.13Lで、全国平均4.45Lの6.10倍。2位宮崎15.02L、3位大分8.10L、4位熊本7.70L、5位福岡6.23L。九州が上位を独占し、鹿児島が2位宮崎の1.81倍で別格の1強。芋焼酎の本場という定説が、消費の数字でもくっきり表れている。

ビール・ウイスキー・果実酒は東京3冠、業務用都市の力

意外なのは東京都が3種類の酒で1位を取っている点。

酒類 1位(東京都) 全国平均 倍率 2位
ビール 東京都 33.71L 18.60L 1.81倍 北海道23.96L
果実酒(ワイン) 東京都 8.89L 2.59L 3.43倍 山梨県8.43L
ウイスキー 東京都 2.79L 1.63L 1.71倍 山梨県2.77L

ビールは東京33.71Lで、2位北海道23.96L・3位富山23.96L・4位大阪23.73Lと続く。サラリーマンの仕事帰りの一杯、接待、出張中の飲食店需要が、人口集中する東京の販売量を押し上げているとみられる。

ワインは2位の山梨県(8.43L)と僅差ながら、東京が1位。山梨は国内ワインの一大産地としてのイメージが強いが、販売数量ベースでは東京(飲食店・専門店需要)が上回る構図。一方で、人口比で山梨が東京に肉薄するのは、ワイナリーの地元消費の厚みがあるとみられる。

ウイスキーも東京2.79L・山梨2.77Lで僅差。山梨はサントリー白州蒸溜所の地元で、国内ウイスキーのメッカの一つ。3位は青森県の2.25L、4位大阪2.12L、5位宮城2.10Lで、地理的に分散している。

リキュールは青森30.91L、発泡酒は高知14.66L

東京が3冠を取った一方で、地方県が独自の酒類で1位を取っているケースもある。

酒類 1位 全国平均 倍率
リキュール 青森県 30.91L 22.18L 1.39倍
発泡酒 高知県 14.66L 6.01L 2.44倍

リキュールは青森県の30.91Lで全国1位。2位秋田30.10L、3位岩手29.06L、4位富山27.43L、5位北海道26.33L。北東北・北陸の寒冷地が上位を占める。「リキュール」はチューハイ・カクテル・薬味酒など幅広い分類を含み、果実系・茶系のチューハイ缶も統計上ここに含まれる。

発泡酒は高知県の14.66Lで全国平均の2.44倍。2位和歌山9.95L、3位富山8.98L、4位宮崎8.51L、5位熊本8.21L。高知は土佐の酒文化(盃の返杯文化「べく杯」など)が知られる「酒どころ」で、合計でも全国5位(91.86L)。発泡酒は手軽な大衆酒の代表格で、高知の酒席文化との相性が表れている可能性がある。

連続式蒸留焼酎の1位は三重県の6.75L、九州ではない

「焼酎」と聞けば多くの人が九州を思い浮かべるが、焼酎には製法による2種類がある。本格焼酎(単式蒸留・乙類)と連続式蒸留(甲類)で、後者は1位の県が違う。

酒類 1位 全国平均 倍率
連続式蒸留焼酎(焼酎甲類) 三重県 6.75L 2.83L 2.39倍

連続式蒸留焼酎は三重県の6.75Lで、2位北海道5.88L、3位秋田5.64L、4位青森5.54L、5位山形5.12L。北日本と三重が上位に並ぶ構図で、九州勢は影が薄い(鹿児島は本格焼酎で別格1位だが、甲類では中位)。

連続式焼酎は無色透明・クセのない蒸留酒で、チューハイ素材・果実酒の希釈ベース・ホッピーなどに使われる。三重県には四日市の宮崎本店「キンミヤ」をはじめ、甲類焼酎の主要メーカーが集中しており、地元での流通シェアの厚みが販売数量に表れているとみられる。「焼酎」と一括りに語ると、本格焼酎(九州)と甲類(三重・北日本)で全く違う地図が出ることが分かる。

酒類別1位5県の人口1人あたり消費量

酒類消費合計1位は東京の102.88L、最下位の1.86倍

最後に、酒類14種類すべてを足した合計(合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒も含む)を見る。

順位 都道府県 合計(L) 全国平均比
1位 東京都 102.88 1.38倍
2位 富山県 96.59 1.30倍
3位 青森県 94.14 1.27倍
4位 秋田県 91.94 1.24倍
5位 高知県 91.86 1.23倍
46位 滋賀県 55.42 0.74倍

東京都は102.88Lで全国1位、最下位の滋賀県(55.42L)の1.86倍。全国平均は74.43Lで、東京はその1.38倍にあたる。

ただし冒頭で述べたとおり、東京の数字には飲食店・接待・出張需要が大量に乗る。住民の飲酒文化を反映した「個人消費型」の県としては、富山・青森・秋田・高知あたりが上位に並ぶ。富山はリキュール4位・スピリッツ等1位・ビール3位・発泡酒3位と「万能型」、青森はリキュール1位・ウイスキー3位、高知はビール5位・発泡酒1位・スピリッツ等5位と、それぞれ独自の「県民酒」が浮かび上がる。

最下位の滋賀県は、酒類14種のいずれもおおむね中位以下にとどまる。県内に酒造メーカーは多いが、人口あたり販売量では全国最下位という結果になっている。

「販売量」と「消費量」、地酒文化と業務用の重ね合わせ

「酒のしおり」の数字は、業務用込みの販売数量を成人人口で割ったもの。地酒文化が県内で完結する県(新潟の清酒・鹿児島の焼酎乙類・三重の連続式焼酎)と、業務用が大量に乗る都市(東京のビール・ウイスキー・果実酒)が、同じランキング表に並ぶ。

それでも主要8種類を並べると、日本の酒の地図が6県(新潟・鹿児島・東京・三重・青森・高知)に塗り分けられているように見える。1県が主要酒類を制しているのではなく、地理・気候・歴史・産業構造が組み合わさって、それぞれの「覇者」が決まっている構図だ。

なお、14種類全体(合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒も含む)に範囲を広げると1位県は12県に分散する。本記事は主要8種類にスコープを絞り、メインのストーリーを描いた。

なお、沖縄県は本調査の対象外で、泡盛などの主要酒類は別統計の管轄。本記事のランキングは46県分。沖縄を含めた全国の酒の地図を描くには、別途統計の補完が必要になる。

主要8種類 × 主要県別の販売数量

主要11県(合計上位の代表8県+ワイン産地の山梨+焼酎甲類1位の三重+合計最下位の滋賀)について、主要8種類と合計の販売数量を一覧で示す。単位はL/年/成人1人。

清酒 焼酎乙類 焼酎甲類 ビール ワイン ウイスキー リキュール 発泡酒 合計
東京都 4.38 2.96 4.54 33.71 8.89 2.79 26.00 5.52 102.88
富山県 5.58 3.28 3.30 23.96 2.39 1.81 27.43 8.98 96.59
青森県 5.86 3.01 5.54 20.90 2.65 2.25 30.91 7.49 94.14
秋田県 6.91 2.48 5.64 21.48 2.20 2.04 30.10 6.08 91.94
高知県 4.20 4.09 2.74 22.86 1.72 1.32 24.39 14.66 91.86
鹿児島県 1.08 27.13 1.47 14.45 2.16 1.34 20.88 7.73 88.79
宮崎県 1.95 15.02 1.28 20.70 2.16 1.55 23.60 8.51 88.83
新潟県 8.33 2.41 4.16 20.70 2.33 1.73 25.80 5.92 83.50
山梨県 3.97 3.50 3.21 18.73 8.43 2.77 19.40 4.28 74.09
三重県 3.56 3.29 6.75 15.64 1.80 1.10 18.30 4.47 64.72
滋賀県 3.85 2.90 1.60 12.36 1.51 1.12 18.08 3.77 55.42

注:本表の数字は本文中の主要県のみ抜粋。「焼酎乙類」=単式蒸留焼酎、「焼酎甲類」=連続式蒸留焼酎、「ワイン」=果実酒。8種類のほか、合成清酒・みりん・甘味果実酒・ブランデー・スピリッツ等・その他醸造酒を含めた14種類すべての合計値が「合計」列。


もっと詳しく

データ出典: 国税庁「酒のしおり 令和6年版」(2022年度・成人1人当たりの酒類販売数量表)(沖縄県は本調査対象外、46県分)

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