後期高齢者医療費の上位10県のうち6県が九州。1位福岡117万円、最下位の新潟76万円の1.53倍。

後期高齢者医療費の上位10県のうち6県が九州。1位福岡117万円、最下位の新潟76万円の1.53倍。
「医療費の西高東低」は厚生労働省自身も認めている地域格差で、医療政策の議論で長年語られてきた。
ところが、後期高齢者(75歳以上)の一人当たり医療費を全47県で並べると、その「西高東低」が想像以上に九州に偏っていることが分かる。
「医療費の地域差分析(令和5年度)」(2023年度実績)によると、後期高齢者の一人当たり医療費(年額)は、1位福岡県の1,169,586円から、最下位の新潟県765,344円まで47県で並ぶ。差は1.53倍。
上位10県のうち6県が九州。福岡(1位)、鹿児島(3位)、佐賀(4位)、長崎(5位)、熊本(6位)、大分(10位)。残り4県は高知(2位)、北海道(7位)、徳島(8位)、大阪(9位)。九州・四国・北日本の北海道で上位を構成し、関東・東北・中部の東日本は下位に集中する。
全国平均は946,520円。1位福岡は全国平均の1.236倍、最下位新潟は0.809倍だ。

数字の前に:データの定義
このランキングは厚生労働省「医療費の地域差分析(令和5年度)」基礎データのシート1から取得した、後期高齢者医療制度(75歳以上)の一人当たり実績医療費(年額)。2023年度実績で全47県揃っている。
「対全国比」(指標名 medical_cost_index)は、各県の一人当たり医療費を全国平均で割った値。1.0より大きければ全国平均以上、1.0未満は平均以下。本記事の「全国平均比」表記はすべてこの指数を指す。
医療費は「入院」「外来」「歯科」の3つに細かく分けて公表されている。本記事は計4指標で47県を眺める。
上位10県のうち6県が九州、福岡が1.236倍で1位
上位10県を並べると、九州勢の集中が目を引く。
| 順位 | 都道府県 | 一人当たり医療費 | 全国平均比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 福岡県 | 1,169,586円 | 1.236倍 |
| 2位 | 高知県 | 1,154,935円 | 1.220倍 |
| 3位 | 鹿児島県 | 1,120,182円 | 1.183倍 |
| 4位 | 佐賀県 | 1,100,088円 | 1.162倍 |
| 5位 | 長崎県 | 1,092,524円 | 1.154倍 |
| 6位 | 熊本県 | 1,087,781円 | 1.149倍 |
| 7位 | 北海道 | 1,068,304円 | 1.129倍 |
| 8位 | 徳島県 | 1,067,952円 | 1.128倍 |
| 9位 | 大阪府 | 1,060,579円 | 1.121倍 |
| 10位 | 大分県 | 1,059,502円 | 1.119倍 |
九州8県(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のうち、宮崎(28位、92.5万円)と沖縄(12位、103.9万円)を除く6県が上位10入り。沖縄も12位で全国平均超えなので、九州の中で平均を下回るのは宮崎のみ。
九州の医療費の高さは、後期高齢者の医療制度・受療パターンの構造的な特徴で、特に入院日数が長い地域として知られる。詳細は後述する。
最下位は新潟76.5万円、東日本が下位を独占
47位から38位を並べると、東日本の集中がくっきり浮かぶ。
| 順位 | 都道府県 | 一人当たり医療費 | 全国平均比 |
|---|---|---|---|
| 38位 | 茨城県 | 847,526円 | 0.895倍 |
| 39位 | 埼玉県 | 843,815円 | 0.891倍 |
| 40位 | 栃木県 | 836,172円 | 0.883倍 |
| 41位 | 静岡県 | 834,967円 | 0.882倍 |
| 42位 | 千葉県 | 831,870円 | 0.879倍 |
| 43位 | 福島県 | 823,579円 | 0.870倍 |
| 44位 | 青森県 | 819,854円 | 0.866倍 |
| 45位 | 秋田県 | 811,209円 | 0.857倍 |
| 46位 | 岩手県 | 775,542円 | 0.819倍 |
| 47位 | 新潟県 | 765,344円 | 0.809倍 |
下位10県のうち、関東4県(茨城・埼玉・栃木・千葉)、東北4県(福島・青森・秋田・岩手)、中部1県(静岡)、新潟県の構成。最下位の新潟は1位福岡の65.4%、つまり3分の2弱の医療費にとどまる。
新潟と岩手は入院費が突出して低い(後述)ことが、合計を引き下げる要因になっている。
入院費の地域差で「西高東低」が最も鮮明
後期高齢者医療費の3区分(入院・外来・歯科)の中で、入院費に「西高東低」の構造が最も鮮明に表れる。
| 順位 | 入院費 Top5 | 入院費 Bottom5 |
|---|---|---|
| 1位 | 高知県 729,700円 | 岩手県 382,058円 |
| 2位 | 鹿児島県 673,421円 | 新潟県 388,101円 |
| 3位 | 福岡県 671,651円 | 静岡県 396,303円 |
| 4位 | 熊本県 644,932円 | 千葉県 403,067円 |
| 5位 | 長崎県 632,952円 | 茨城県 404,997円 |
入院費Top5は全部西日本(九州4県+四国の高知)、Bottom5は全部東日本。1位高知の72.97万円は、最下位岩手38.21万円の1.91倍。同じ「後期高齢者の一人当たり入院費」でも、ほぼ倍違う。
九州の医療体制は病床数が多く、入院日数が長いことが厚労省自身の分析でも指摘されている。一方、東日本は外来中心の医療パターンが定着していると説明される。地域の医療提供体制の差が、そのまま医療費の差に表れている構造。

外来費は都市部に偏る、大阪・広島・愛知・東京・福岡
外来費(入院外)のランキングは、入院費とは別の構造を見せる。
| 順位 | 外来費 Top5 |
|---|---|
| 1位 | 大阪府 464,955円 |
| 2位 | 広島県 463,133円 |
| 3位 | 愛知県 453,853円 |
| 4位 | 東京都 453,741円 |
| 5位 | 福岡県 451,026円 |
外来費の上位は都市部が並ぶ。大阪・愛知・東京・福岡といった大都市圏に、広島が続く構図。後期高齢者の外来通院は医療機関の密度・通院利便性に影響を受けるため、都市部ほど受診頻度が上がる傾向と読める。
外来費の下位は新潟(34.4万円)、岩手(36.6万円)、秋田(36.8万円)、富山(37.7万円)、福井(37.7万円)と北陸・東北の日本海側に集中。これらの県は入院費も低く、合計の医療費も下位に来ている。
歯科費はさらに都市部に集中、Top3は大阪・広島・福岡
歯科費は3区分のうち最も金額規模が小さいが、都市偏在が最も強い。
| 順位 | 歯科費 Top3 | 歯科費 Bottom3 |
|---|---|---|
| 1位 | 大阪府 53,450円 | 青森県 22,234円 |
| 2位 | 広島県 47,011円 | 福井県 25,841円 |
| 3位 | 福岡県 46,909円 | 沖縄県 25,868円 |
大阪は青森の2.4倍。歯科は予防・治療の通院頻度が高いほど費用がかさむため、歯科医院の密度・通院インセンティブの差が反映される可能性がある。歯科費の低さが「歯の健康状態の良さ」を意味するわけではなく、受診機会・受療パターンの差として読むのが妥当だ。
医療費の地域差は「医療提供体制」の地域差
47県の後期高齢者医療費の地図を眺めると、3つの構造が見える。
第一に、入院費の九州・四国偏在。これは病床数の多さ、入院日数の長さなど、医療提供体制の差が直接効いている。
第二に、外来費の都市偏在。大阪・東京・愛知・広島・福岡など、医療機関密度が高い県で外来通院費が積み上がる。
第三に、歯科費の都市偏在。これも歯科医院密度と通院頻度の差。
「医療費が高い県」と「医療費が低い県」は、住民の健康状態というよりも、医療機関の供給体制と受療パターンの差が大きい。後期高齢者医療制度は全国共通の保険制度なので、診療報酬は全国一律。それでも一人当たり実績医療費が1.53倍違うのは、「県内でどれだけ医療を使うか」の差として現れている。
最下位の新潟県(76.5万円)が1位福岡(117万円)より「高齢者の健康状態が良い」とは即断できない。むしろ「外来・入院ともに使われ方が控えめ」と読むのが妥当だ。
全47都道府県 後期高齢者医療費ランキング
2023年度の後期高齢者一人当たり医療費(年額)を全47県で並べる。単位は円、対全国比は倍率。
| 順位 | 都道府県 | 医療費 | 対全国比 | 順位 | 都道府県 | 医療費 | 対全国比 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 福岡県 | 1,169,586 | 1.236 | 25 | 奈良県 | 936,765 | 0.990 | |
| 2 | 高知県 | 1,154,935 | 1.220 | 26 | 富山県 | 933,522 | 0.986 | |
| 3 | 鹿児島県 | 1,120,182 | 1.183 | 27 | 滋賀県 | 932,976 | 0.986 | |
| 4 | 佐賀県 | 1,100,088 | 1.162 | 28 | 宮崎県 | 924,652 | 0.977 | |
| 5 | 長崎県 | 1,092,524 | 1.154 | 29 | 福井県 | 912,155 | 0.964 | |
| 6 | 熊本県 | 1,087,781 | 1.149 | 30 | 神奈川県 | 882,594 | 0.932 | |
| 7 | 北海道 | 1,068,304 | 1.129 | 31 | 岐阜県 | 868,284 | 0.917 | |
| 8 | 徳島県 | 1,067,952 | 1.128 | 32 | 三重県 | 864,937 | 0.914 | |
| 9 | 大阪府 | 1,060,579 | 1.121 | 33 | 山梨県 | 864,209 | 0.913 | |
| 10 | 大分県 | 1,059,502 | 1.119 | 34 | 群馬県 | 860,029 | 0.909 | |
| 11 | 広島県 | 1,052,843 | 1.112 | 35 | 長野県 | 854,799 | 0.903 | |
| 12 | 沖縄県 | 1,039,947 | 1.099 | 36 | 宮城県 | 850,211 | 0.898 | |
| 13 | 山口県 | 1,031,806 | 1.090 | 37 | 山形県 | 849,237 | 0.897 | |
| 14 | 京都府 | 1,018,864 | 1.076 | 38 | 茨城県 | 847,526 | 0.895 | |
| 15 | 兵庫県 | 1,013,871 | 1.071 | 39 | 埼玉県 | 843,815 | 0.891 | |
| 16 | 岡山県 | 991,115 | 1.047 | 40 | 栃木県 | 836,172 | 0.883 | |
| 17 | 香川県 | 977,779 | 1.033 | 41 | 静岡県 | 834,967 | 0.882 | |
| 18 | 石川県 | 971,713 | 1.027 | 42 | 千葉県 | 831,870 | 0.879 | |
| 19 | 愛媛県 | 955,296 | 1.009 | 43 | 福島県 | 823,579 | 0.870 | |
| 20 | 愛知県 | 950,023 | 1.004 | 44 | 青森県 | 819,854 | 0.866 | |
| 21 | 東京都 | 948,906 | 1.003 | 45 | 秋田県 | 811,209 | 0.857 | |
| 22 | 島根県 | 944,692 | 0.998 | 46 | 岩手県 | 775,542 | 0.819 | |
| 23 | 和歌山県 | 944,112 | 0.997 | 47 | 新潟県 | 765,344 | 0.809 | |
| 24 | 鳥取県 | 942,971 | 0.996 |
注:単位は円。「医療費」は後期高齢者の一人当たり実績医療費(年額)。「対全国比」は全国平均(946,520円)を1.0としたときの倍率。
もっと詳しく
データ出典: 厚生労働省「医療費の地域差分析(令和5年度)」(基礎データ シート1。後期高齢者医療制度・一人当たり実績医療費・年額・47県)



