ものがたり
2023年度

後期高齢者医療費の上位10県のうち6県が九州。1位福岡117万円、最下位の新潟76万円の1.53倍。

公開日: 2026-05-08
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後期高齢者医療費の上位10県のうち6県が九州。1位福岡117万円、最下位の新潟76万円の1.53倍。

後期高齢者医療費の上位10県のうち6県が九州。1位福岡117万円、最下位の新潟76万円の1.53倍。

「医療費の西高東低」は厚生労働省自身も認めている地域格差で、医療政策の議論で長年語られてきた。

ところが、後期高齢者(75歳以上)の一人当たり医療費を全47県で並べると、その「西高東低」が想像以上に九州に偏っていることが分かる。

「医療費の地域差分析(令和5年度)」(2023年度実績)によると、後期高齢者の一人当たり医療費(年額)は、1位福岡県の1,169,586円から、最下位の新潟県765,344円まで47県で並ぶ。差は1.53倍。

上位10県のうち6県が九州。福岡(1位)、鹿児島(3位)、佐賀(4位)、長崎(5位)、熊本(6位)、大分(10位)。残り4県は高知(2位)、北海道(7位)、徳島(8位)、大阪(9位)。九州・四国・北日本の北海道で上位を構成し、関東・東北・中部の東日本は下位に集中する。

全国平均は946,520円。1位福岡は全国平均の1.236倍、最下位新潟は0.809倍だ。

後期高齢者医療費の47県ランキング

数字の前に:データの定義

このランキングは厚生労働省「医療費の地域差分析(令和5年度)」基礎データのシート1から取得した、後期高齢者医療制度(75歳以上)の一人当たり実績医療費(年額)。2023年度実績で全47県揃っている。

「対全国比」(指標名 medical_cost_index)は、各県の一人当たり医療費を全国平均で割った値。1.0より大きければ全国平均以上、1.0未満は平均以下。本記事の「全国平均比」表記はすべてこの指数を指す。

医療費は「入院」「外来」「歯科」の3つに細かく分けて公表されている。本記事は計4指標で47県を眺める。

上位10県のうち6県が九州、福岡が1.236倍で1位

上位10県を並べると、九州勢の集中が目を引く。

順位 都道府県 一人当たり医療費 全国平均比
1位 福岡県 1,169,586円 1.236倍
2位 高知県 1,154,935円 1.220倍
3位 鹿児島県 1,120,182円 1.183倍
4位 佐賀県 1,100,088円 1.162倍
5位 長崎県 1,092,524円 1.154倍
6位 熊本県 1,087,781円 1.149倍
7位 北海道 1,068,304円 1.129倍
8位 徳島県 1,067,952円 1.128倍
9位 大阪府 1,060,579円 1.121倍
10位 大分県 1,059,502円 1.119倍

九州8県(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)のうち、宮崎(28位、92.5万円)と沖縄(12位、103.9万円)を除く6県が上位10入り。沖縄も12位で全国平均超えなので、九州の中で平均を下回るのは宮崎のみ。

九州の医療費の高さは、後期高齢者の医療制度・受療パターンの構造的な特徴で、特に入院日数が長い地域として知られる。詳細は後述する。

最下位は新潟76.5万円、東日本が下位を独占

47位から38位を並べると、東日本の集中がくっきり浮かぶ。

順位 都道府県 一人当たり医療費 全国平均比
38位 茨城県 847,526円 0.895倍
39位 埼玉県 843,815円 0.891倍
40位 栃木県 836,172円 0.883倍
41位 静岡県 834,967円 0.882倍
42位 千葉県 831,870円 0.879倍
43位 福島県 823,579円 0.870倍
44位 青森県 819,854円 0.866倍
45位 秋田県 811,209円 0.857倍
46位 岩手県 775,542円 0.819倍
47位 新潟県 765,344円 0.809倍

下位10県のうち、関東4県(茨城・埼玉・栃木・千葉)、東北4県(福島・青森・秋田・岩手)、中部1県(静岡)、新潟県の構成。最下位の新潟は1位福岡の65.4%、つまり3分の2弱の医療費にとどまる。

新潟と岩手は入院費が突出して低い(後述)ことが、合計を引き下げる要因になっている。

入院費の地域差で「西高東低」が最も鮮明

後期高齢者医療費の3区分(入院・外来・歯科)の中で、入院費に「西高東低」の構造が最も鮮明に表れる。

順位 入院費 Top5 入院費 Bottom5
1位 高知県 729,700円 岩手県 382,058円
2位 鹿児島県 673,421円 新潟県 388,101円
3位 福岡県 671,651円 静岡県 396,303円
4位 熊本県 644,932円 千葉県 403,067円
5位 長崎県 632,952円 茨城県 404,997円

入院費Top5は全部西日本(九州4県+四国の高知)、Bottom5は全部東日本。1位高知の72.97万円は、最下位岩手38.21万円の1.91倍。同じ「後期高齢者の一人当たり入院費」でも、ほぼ倍違う。

九州の医療体制は病床数が多く、入院日数が長いことが厚労省自身の分析でも指摘されている。一方、東日本は外来中心の医療パターンが定着していると説明される。地域の医療提供体制の差が、そのまま医療費の差に表れている構造。

入院費 vs 外来費 の県別対比

外来費は都市部に偏る、大阪・広島・愛知・東京・福岡

外来費(入院外)のランキングは、入院費とは別の構造を見せる。

順位 外来費 Top5
1位 大阪府 464,955円
2位 広島県 463,133円
3位 愛知県 453,853円
4位 東京都 453,741円
5位 福岡県 451,026円

外来費の上位は都市部が並ぶ。大阪・愛知・東京・福岡といった大都市圏に、広島が続く構図。後期高齢者の外来通院は医療機関の密度・通院利便性に影響を受けるため、都市部ほど受診頻度が上がる傾向と読める。

外来費の下位は新潟(34.4万円)、岩手(36.6万円)、秋田(36.8万円)、富山(37.7万円)、福井(37.7万円)と北陸・東北の日本海側に集中。これらの県は入院費も低く、合計の医療費も下位に来ている。

歯科費はさらに都市部に集中、Top3は大阪・広島・福岡

歯科費は3区分のうち最も金額規模が小さいが、都市偏在が最も強い。

順位 歯科費 Top3 歯科費 Bottom3
1位 大阪府 53,450円 青森県 22,234円
2位 広島県 47,011円 福井県 25,841円
3位 福岡県 46,909円 沖縄県 25,868円

大阪は青森の2.4倍。歯科は予防・治療の通院頻度が高いほど費用がかさむため、歯科医院の密度・通院インセンティブの差が反映される可能性がある。歯科費の低さが「歯の健康状態の良さ」を意味するわけではなく、受診機会・受療パターンの差として読むのが妥当だ。

医療費の地域差は「医療提供体制」の地域差

47県の後期高齢者医療費の地図を眺めると、3つの構造が見える。

第一に、入院費の九州・四国偏在。これは病床数の多さ、入院日数の長さなど、医療提供体制の差が直接効いている。

第二に、外来費の都市偏在。大阪・東京・愛知・広島・福岡など、医療機関密度が高い県で外来通院費が積み上がる。

第三に、歯科費の都市偏在。これも歯科医院密度と通院頻度の差。

「医療費が高い県」と「医療費が低い県」は、住民の健康状態というよりも、医療機関の供給体制と受療パターンの差が大きい。後期高齢者医療制度は全国共通の保険制度なので、診療報酬は全国一律。それでも一人当たり実績医療費が1.53倍違うのは、「県内でどれだけ医療を使うか」の差として現れている。

最下位の新潟県(76.5万円)が1位福岡(117万円)より「高齢者の健康状態が良い」とは即断できない。むしろ「外来・入院ともに使われ方が控えめ」と読むのが妥当だ。

全47都道府県 後期高齢者医療費ランキング

2023年度の後期高齢者一人当たり医療費(年額)を全47県で並べる。単位は円、対全国比は倍率。

順位 都道府県 医療費 対全国比 順位 都道府県 医療費 対全国比
1 福岡県 1,169,586 1.236 25 奈良県 936,765 0.990
2 高知県 1,154,935 1.220 26 富山県 933,522 0.986
3 鹿児島県 1,120,182 1.183 27 滋賀県 932,976 0.986
4 佐賀県 1,100,088 1.162 28 宮崎県 924,652 0.977
5 長崎県 1,092,524 1.154 29 福井県 912,155 0.964
6 熊本県 1,087,781 1.149 30 神奈川県 882,594 0.932
7 北海道 1,068,304 1.129 31 岐阜県 868,284 0.917
8 徳島県 1,067,952 1.128 32 三重県 864,937 0.914
9 大阪府 1,060,579 1.121 33 山梨県 864,209 0.913
10 大分県 1,059,502 1.119 34 群馬県 860,029 0.909
11 広島県 1,052,843 1.112 35 長野県 854,799 0.903
12 沖縄県 1,039,947 1.099 36 宮城県 850,211 0.898
13 山口県 1,031,806 1.090 37 山形県 849,237 0.897
14 京都府 1,018,864 1.076 38 茨城県 847,526 0.895
15 兵庫県 1,013,871 1.071 39 埼玉県 843,815 0.891
16 岡山県 991,115 1.047 40 栃木県 836,172 0.883
17 香川県 977,779 1.033 41 静岡県 834,967 0.882
18 石川県 971,713 1.027 42 千葉県 831,870 0.879
19 愛媛県 955,296 1.009 43 福島県 823,579 0.870
20 愛知県 950,023 1.004 44 青森県 819,854 0.866
21 東京都 948,906 1.003 45 秋田県 811,209 0.857
22 島根県 944,692 0.998 46 岩手県 775,542 0.819
23 和歌山県 944,112 0.997 47 新潟県 765,344 0.809
24 鳥取県 942,971 0.996

注:単位は円。「医療費」は後期高齢者の一人当たり実績医療費(年額)。「対全国比」は全国平均(946,520円)を1.0としたときの倍率。


もっと詳しく

データ出典: 厚生労働省「医療費の地域差分析(令和5年度)」(基礎データ シート1。後期高齢者医療制度・一人当たり実績医療費・年額・47県)

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