鶏肉支出額1位は鹿児島市23,534円、上位4都市は九州。全国平均は17年で+57%。

鶏肉支出額1位は鹿児島市23,534円、上位4都市は九州。全国平均は17年で+57%。
鶏肉を最も多く買う都市はどこか。家計調査の直近3年(2023〜2025年)平均で、都道府県庁所在市及び政令指定都市の鶏肉支出額を並べると、上位4都市はすべて九州だった。
1位は鹿児島市の23,534円、2位福岡市23,472円、3位熊本市23,368円、4位大分市23,037円。上位4都市は500円以内の僅差で23,000円台に並び、全国平均19,258円の約1.20〜1.22倍を記録している。
家族・友人で「かしわ」と呼び、水炊き・鶏飯・焼き鳥・から揚げなど多様な鶏肉料理を日常食とする九州の食文化が、家計調査の数字にまとまって現れている。
鹿児島23,534円、福岡23,472円、九州4都市が僅差で並ぶ

上位10都市を並べると、九州と関西の厚みが見える。
| 順位 | 観測都市 | 3年平均支出額 |
|---|---|---|
| 1位 | 鹿児島市 | 23,534円 |
| 2位 | 福岡市 | 23,472円 |
| 3位 | 熊本市 | 23,368円 |
| 4位 | 大分市 | 23,037円 |
| 5位 | 京都市 | 22,282円 |
| 6位 | 岡山市 | 22,176円 |
| 7位 | 大阪市 | 21,965円 |
| 8位 | 山口市 | 21,577円 |
| 9位 | 宮崎市 | 21,488円 |
| 10位 | 北九州市 | 21,449円 |
1位鹿児島と4位大分の差は497円。九州4都市がほぼ同じ帯に並ぶ「九州4強」の構図で、5位以下の関西・中国地方とは明確な段差がある。
九州から上位10都市に入るのは、鹿児島・福岡・熊本・大分・宮崎・北九州の6都市。九州7県のうち佐賀を除いた6都市がすべて10位以内に入り、九州の鶏肉文化の厚みが突出している。佐賀市も15位20,651円で全国平均を超えており、九州7都市すべてが全国平均以上。地方単位でここまで均等に上位に並ぶ品目は珍しい。
なぜ九州が上位なのか
九州が上位を独占する理由は、3つに分解して読むのが妥当だろう。
1つめは生産インフラの近接。ブロイラー(食肉用鶏)の飼養羽数は鹿児島県が3,128万羽で全国1位、宮崎県が2,825万羽で2位(農林水産省「畜産統計」2023年)。両県で全国の42.5%を占める一大生産地で、地元には養鶏場・処理場・加工業者・小売の流通インフラが集積している。生産地に近い分、鮮度・品揃え・価格面の優位性があり、家庭での購入頻度を支えているとみるのが自然だ。
2つめは地鶏ブランドの厚み。鹿児島のさつま地鶏・さつま若しゃも、宮崎の地頭鶏、福岡の博多地鶏、熊本の天草大王、大分の豊の活地鶏と、県ごとに固有の地鶏ブランドが存在する。プレミアム価格帯から日常価格帯までの選択肢が広く、外食でも家庭でも鶏料理の幅が確保されている。
3つめは鶏料理の食文化的定着。家族・友人で「かしわ」と呼び、水炊き・鶏飯・鶏天・チキン南蛮・からあげなど、地鶏を使った郷土料理が日常食として根付いている。「焼酎ランキング(1位宮崎・2位鹿児島)」と上位地域が重なることからも、「鶏肉+焼酎」の組み合わせが九州南部〜北部の日常食卓として一体化している可能性が高い。
家計調査が捉えるのは「家庭が買って家で食べた支出額」のみなので、生産インフラ・ブランド層・食文化の3つが重なれば、家庭支出額がここまで突出するという読み方ができる。
鶏肉は本数より「頻度」で動く品目
ワインやウイスキーが「ボトル単価」で支出額が動きやすいのと違い、鶏肉は単価のばらつきが比較的小さい品目だ。地鶏(プレミアム)から国産若鶏・輸入鶏まで価格帯はあるが、家庭の主流は若鶏のもも・むね肉で、100gあたりの単価が大きく動くことは少ない。
このため、九州の高い支出額を生むのは「単価の高さ」より「購入頻度の高さ」と読むのが自然だろう。週に何回鶏肉を買うか、1回あたり何g買うかの差が、年間9,097円(鹿児島と最下位前橋の差)として現れている可能性が高い。
ただし家計調査は「金額」しか記録せず、購入回数・購入量は別調査でないと取れないため、頻度と単価のどちらがどの程度効いているかは厳密には分けられない。「九州は鶏肉を頻繁に買い、それが支出額を押し上げている」という見立てを、傍証とともに置くにとどまるのが妥当だ。
反証例: 京都5位、九州外でも上位に入る
九州独占とは言い切れない例として、5位京都市22,282円、6位岡山市22,176円、7位大阪市21,965円が並ぶ。京都市と4位大分市の差は755円で、九州勢の最後尾とほぼ同水準だ。
京都・大阪は鶏ガラベースのうどん文化や、京赤地鶏・河内鴨など独自の鶏料理ブランドが残る地域で、九州とは別系統の鶏文化が定着している可能性がある。岡山も鶏卵・採卵鶏の集積地として知られ、肉用の流通も連動している。
つまり「鶏肉支出は九州だけの現象」ではなく、生産インフラ・地鶏ブランド・食文化の3要因が同時に揃った地域では九州外でも上位に入り得る。一方で同じ近畿圏でも17位東京都区部20,516円、24位横浜市19,850円など首都圏は中位に沈み、地方ブロック単位ではなく都市単位で読む必要がある。
最下位は前橋市の14,437円
下位を見ると、関東北部・東北・北陸の都市が並ぶ。
| 順位 | 観測都市 | 3年平均支出額 |
|---|---|---|
| 50位 | 長野市 | 15,242円 |
| 51位 | 水戸市 | 14,971円 |
| 52位 | 前橋市 | 14,437円 |
最下位の前橋市14,437円は、1位鹿児島市の約61%。差は1.63倍にのぼる。前橋・水戸・長野・福島・盛岡・新潟と、関東内陸〜東北〜信越・北陸の都市が下位に並ぶ。
関東北部・東北は、豚肉の支出額が相対的に多い地域として知られる。鶏肉と豚肉は、地域ごとに好まれる肉の種類として入れ替わる関係にあり、「九州は鶏、東北・北関東は豚」という構図が家計調査の数字から見える。1位鹿児島と最下位前橋の差は9,097円。年間で約1万円分、鶏肉への家計の入れ方が地域で違っているということだ。
全国では17年で+57%、鶏肉市場が拡大

鶏肉支出額の全国平均は、2007〜2009年の12,247円から2023〜2025年の19,258円へと、約57%も増えている。
注目すべきは、肉類のなかで鶏肉だけが突出して伸びていることだ。同じ家計調査で全国3年平均を見ると、
- 牛肉: 20,640円 → 21,217円(+2.8%)ほぼ横ばい
- 豚肉: 24,756円 → 34,262円(+38.4%)大きく伸長
- 鶏肉: 12,247円 → 19,258円(+57.2%)最大の伸び
牛肉が横ばいで、豚肉も大きく伸びているが、伸び率では鶏肉が頭ひとつ抜けている。家計の肉類支出のなかで、鶏肉のシェアが構造的に上がってきたとみるのが自然だろう。
転換点として読みやすいのは2点ある。1つは2010年代の健康志向トレンド。低脂肪・高たんぱくを訴求する商品・レシピが家庭・外食で広がり、鶏むね肉やサラダチキン市場が拡大した時期と重なる。もう1つは2020〜2022年のコロナ・円安局面。家庭調理の機会が増えた一方で、輸入牛肉価格は円安で上昇し、相対的に手頃な国産鶏肉に家計支出が流れた可能性が指摘されている。
ただしこれらは状況証拠であり、家計調査の数字だけから因果を直接示すことはできない。確実に言えるのは、「日本の食卓で鶏肉が占めるシェアは、この17年で構造的に拡大した」という観察事実だ。
全52観測都市ランキング
家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。
| 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島市 | 23,534円 | 27 | 高松市 | 19,424円 | |
| 2 | 福岡市 | 23,472円 | 28 | さいたま市 | 19,412円 | |
| 3 | 熊本市 | 23,368円 | 29 | 千葉市 | 19,204円 | |
| 4 | 大分市 | 23,037円 | 30 | 名古屋市 | 19,193円 | |
| 5 | 京都市 | 22,282円 | 31 | 秋田市 | 18,991円 | |
| 6 | 岡山市 | 22,176円 | 32 | 川崎市 | 18,815円 | |
| 7 | 大阪市 | 21,965円 | 33 | 浜松市 | 18,744円 | |
| 8 | 山口市 | 21,577円 | 34 | 静岡市 | 18,286円 | |
| 9 | 宮崎市 | 21,488円 | 35 | 松山市 | 18,221円 | |
| 10 | 北九州市 | 21,449円 | 36 | 相模原市 | 18,220円 | |
| 11 | 松江市 | 21,415円 | 37 | 金沢市 | 18,129円 | |
| 12 | 堺市 | 21,361円 | 38 | 岐阜市 | 17,969円 | |
| 13 | 神戸市 | 21,216円 | 39 | 仙台市 | 17,888円 | |
| 14 | 広島市 | 20,898円 | 40 | 山形市 | 17,545円 | |
| 15 | 佐賀市 | 20,651円 | 41 | 宇都宮市 | 17,085円 | |
| 16 | 大津市 | 20,624円 | 42 | 福井市 | 17,016円 | |
| 17 | 東京都区部 | 20,516円 | 43 | 青森市 | 16,959円 | |
| 18 | 奈良市 | 20,390円 | 44 | 甲府市 | 16,780円 | |
| 19 | 長崎市 | 20,305円 | 45 | 新潟市 | 16,281円 | |
| 20 | 徳島市 | 20,258円 | 46 | 富山市 | 16,219円 | |
| 21 | 高知市 | 20,023円 | 47 | 那覇市 | 16,155円 | |
| 22 | 和歌山市 | 19,891円 | 48 | 盛岡市 | 15,993円 | |
| 23 | 横浜市 | 19,850円 | 49 | 福島市 | 15,269円 | |
| 24 | 鳥取市 | 19,827円 | 50 | 長野市 | 15,242円 | |
| 25 | 札幌市 | 19,818円 | 51 | 水戸市 | 14,971円 | |
| 26 | 津市 | 19,578円 | 52 | 前橋市 | 14,437円 |
鹿児島23,534円、前橋14,437円、肉類で最大の+57%
鹿児島市23,534円、福岡市23,472円、全国平均19,258円、最下位前橋市14,437円。九州4都市がトップ4、1位と最下位で1.63倍。全国平均は17年で+57%伸び、これは牛肉+2.8%・豚肉+38%を抑えて肉類のなかで最大の伸び率。生産インフラ・地鶏ブランド・食文化の3要因が重なる九州が首位を維持し続け、健康志向と円安期の相対価格優位がその拡大トレンドを後押ししている。鶏肉は本数より購入頻度で動く品目で、九州と関東北部の年間9,097円の差は、家庭の食卓に鶏肉が並ぶ回数の差として読むのが自然だろう。
もっと詳しく
データ出典: 総務省「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市)



