47ものがたり
2023-2025年平均(3年平均)

牛肉支出額トップ8が、すべて近畿圏の都市だった。新潟市は京都の3分の1で最下位。

公開日: 2026-04-25
#牛肉#京都#近畿#食文化#家計調査#3年平均
牛肉支出額トップ8が、すべて近畿圏の都市だった。新潟市は京都の3分の1で最下位。

牛肉支出額トップ8が、すべて近畿圏の都市だった。新潟市は京都の3分の1で最下位。

「西は牛肉、東は豚肉」。日本の食文化では、そんな言い方がよくされる。

家計調査の数字を並べると、その傾向は今もかなりはっきり残っている。

県庁所在市と政令指定都市の牛肉支出額を直近3年(2023〜2025年)の平均で見ると、1位は京都市(36,081円)。2位が和歌山市(34,171円)、3位が堺市(34,139円)、4位が奈良市(32,581円)、5位が神戸市(32,212円)と続く。

さらに6位は大津市、7位は大阪市、8位は津市。トップ8はすべて近畿圏の都市で占められていた。

最下位は新潟市(10,176円)、次点は盛岡市(10,223円)。全国平均は21,217円。京都市の支出額は、最下位の新潟市(10,176円)の3.5倍にあたる。

肉の種類ひとつで、ここまで地域差が出る。牛肉は、いまも日本の食文化の境界線をよく映している。

トップ8が近畿で揃う、圧倒的な集中

牛肉支出額ランキング 2023-2025年 3年平均

上位8都市を並べると、地図の上でひとつの塊が浮かび上がる。

順位 都市 3年平均支出額
1位 京都市 36,081円
2位 和歌山市 34,171円
3位 堺市 34,139円
4位 奈良市 32,581円
5位 神戸市 32,212円
6位 大津市 30,336円
7位 大阪市 29,588円
8位 津市 29,498円

大津市は近江牛の産地圏に近く、津市は松阪牛で知られる三重県の県都だ。神戸牛、但馬牛、近江牛、松阪牛といった有力な和牛ブランドが、この近畿ブロックとその周辺に集まっている。

もちろん、ブランド牛だけで日々の支出額が決まるわけではない。ただ、牛肉を身近な食材として選びやすい流通環境があることは確かだ。上位8都市がこの地域に固まるのは、偶然とは考えにくい。

新潟という、鮮やかな対称性

近畿が牛肉で上位を独占するなら、豚肉では何が起きているのか。

答えは鮮やかだ。豚肉支出額の全国1位は新潟市で、38,131円。ところが牛肉では新潟市が最下位の10,176円になる。

ひとつの都市が、豚肉では全国トップ、牛肉では最下位。この対称性はとても印象的だ。

近畿圏では牛肉への支出が厚く、新潟市では豚肉への支出が厚い。家計の中でどの肉を日常的に選ぶかは、単なる価格や気分だけではなく、長く積み重なった食習慣に左右されているように見える。

一人ひとりが意識して「牛肉派」「豚肉派」を選んでいるわけではない。子どもの頃から当たり前に食べてきたものが、そのまま大人になっても日常の選択肢として残る。その積み重ねが、統計に表れている。

西と東の境界線は、今も残っている

近畿トップ5都市+新潟市の牛肉支出額推移

「東は豚、西は牛」という構図は、昔の話として語られがちだが、家計調査の数字を見るかぎり、いまもかなり強く残っている。

近畿では、すき焼きやしゃぶしゃぶをはじめ、牛肉を中心にした料理が家庭の選択肢として根強い。一方で東日本では、日常の肉として豚肉の存在感が大きい地域が多い。

もちろん、日本全国どこでも牛肉は食べられるし、豚肉も牛肉も全国流通している。それでも支出額にここまで差が出るのは、流通条件だけでは説明しきれない。料理の定番、家庭での使い方、祝いの日に何を食べるかといった文化の違いが、今も数字の底に残っているのだろう。

なぜ近畿が圧倒的なのか

数字からは3つの仮説が読み取れる。

理由1 — 牛肉を選びやすい流通圏にある。
近畿圏とその周辺には、有力な和牛産地が集中している。高級ブランド牛だけでなく、日常使いの牛肉も含めて、牛肉が売り場で目につきやすく、選ばれやすい環境がある可能性がある。

理由2 — 家庭料理の型として牛肉が強い。
すき焼き、しゃぶしゃぶ、肉じゃがなど、家庭で牛肉を使う料理が定番として残っている地域では、日常の買い物でも牛肉が選ばれやすい。これは単なる好みというより、料理習慣の問題でもある。

理由3 — 外食や中食の経験も家庭の選好に影響している。
焼肉、すき焼き、牛丼など、外で牛肉に触れる機会が多い地域では、家庭でも牛肉を買うことへの心理的な距離が近い。家計調査が測るのは家庭での支出額だが、その背景には外食や中食での経験もありそうだ。

逆転の兆し — 近畿が落ち、沖縄や北海道が伸びている

牛肉支出額の19年変化率(2007-09 vs 2023-25)

長く続いてきた構図にも、ゆっくりした変化は出ている。

19年間の変化率(2007〜09年比)を見ると、増加率の上位は那覇市(+45%)、札幌市(+39%)、長野市(+32%)だ。従来は牛肉支出額がそれほど高くなかった地域でも、支出が伸びてきている。

一方で減少幅が大きかったのは、徳島市(-19%)、津市(-18%)、大津市(-17%)、和歌山市(-16%)、神戸市(-15%)。下落幅の大きい都市に近畿圏が目立つ。

これは、近畿の牛肉文化が消えたという意味ではない。もともと高かった地域が少し下がり、低かった地域が追い上げている、という見方のほうが自然だろう。

那覇市の+45%は特に目を引く。沖縄にはもともとステーキ文化があるが、家庭での牛肉購入も広がってきたと見ることができる。全国的に牛肉がより一般化してきた中で、後発地域の伸びが目立っている。

それでも、トップ8がなお近畿圏で固まっている事実は重い。差は縮まりつつあっても、食文化の地図そのものが簡単に塗り替わるわけではない。

牛肉が語る、日本の食文化の厚み

牛肉支出額のランキングは、単なる嗜好の違い以上のものを示している。

京都市が1位、和歌山市が2位、奈良市が4位。これらの都市が特別に「牛肉の街」を名乗っているわけではない。ただ、家庭の食卓の中で牛肉を選ぶ習慣が積み重なってきた結果として、いまの数字がある。

新潟市が牛肉では最下位で、豚肉では1位という対称性も象徴的だ。食文化の境界線は、いまも統計の上にはっきり残っている。

牛肉は「どこで育てられているか」だけではなく、「どこで食卓に並ぶか」で見ると、また違う姿が見えてくる。

全52観測都市ランキング

家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。

順位 名称 2023〜2025年平均 順位 名称 2023〜2025年平均
1 京都市 36,081円 27 鹿児島市 22,364円
2 和歌山市 34,171円 28 高知市 21,959円
3 堺市 34,139円 29 岐阜市 21,490円
4 奈良市 32,581円 30 千葉市 20,470円
5 神戸市 32,212円 31 富山市 19,612円
6 大津市 30,336円 32 金沢市 19,598円
7 大阪市 29,588円 33 鳥取市 19,491円
8 津市 29,498円 34 松江市 19,130円
9 広島市 29,372円 35 川崎市 18,376円
10 山口市 28,350円 36 さいたま市 16,588円
11 北九州市 27,353円 37 相模原市 16,321円
12 松山市 26,559円 38 宇都宮市 15,878円
13 福岡市 26,215円 39 那覇市 15,292円
14 大分市 26,176円 40 静岡市 15,223円
15 佐賀市 25,990円 41 甲府市 14,882円
16 熊本市 25,642円 42 青森市 14,844円
17 徳島市 24,952円 43 仙台市 12,632円
18 山形市 24,808円 44 浜松市 12,589円
19 長崎市 24,705円 45 長野市 12,328円
20 名古屋市 24,359円 46 水戸市 12,325円
21 高松市 24,171円 47 秋田市 12,275円
22 東京都区部 23,918円 48 札幌市 11,562円
23 宮崎市 23,441円 49 福島市 11,187円
24 福井市 23,176円 50 前橋市 10,886円
25 横浜市 22,824円 51 盛岡市 10,223円
26 岡山市 22,816円 52 新潟市 10,176円

もっと詳しく

データ出典: 総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市)