47ものがたり
2023-2025年平均(3年平均)

りんご産地で「支出額の低下」が進んでいる。福島市はピークから半減した。

公開日: 2026-04-25
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りんご産地で「支出額の低下」が進んでいる。福島市はピークから半減した。

りんご産地で「支出額の低下」が進んでいる。福島市はピークから半減した。

りんごの生産量1位は青森県。全国シェア62%、37万トンを生産する圧倒的な王者だ(2023年産、農林水産省「作物統計」)。

家計調査の支出額でも、青森市が1位だ。直近3年(2023〜2025年)の平均で見ると、青森市8,246円が首位。長野市8,220円、盛岡市8,095円が僅差で続く。最下位は和歌山市の3,671円だった。

ここまでは、想像通りかもしれない。

問題は「今」ではなく「変化」にある。

生産地と購入地の不思議な関係

3年平均りんご支出額ランキングと生産量の対比

家計調査(県庁所在市ベース)の3年平均支出額と、農林水産省「作物統計」の生産量(都道府県ベース)を並べてみる。

購入順位 観測都市 3年平均支出額 主な生産県の生産量(2023年)
1位 青森市 8,246円 青森県 37.4万トン(全国1位)
2位 長野市 8,220円 長野県 10.7万トン(全国2位)
3位 盛岡市 8,095円 岩手県 3.2万トン(全国3位)
4位 山形市 6,759円 山形県 3.0万トン(全国4位)
5位 秋田市 6,512円 秋田県 1.6万トン(全国6位)
6位 福島市 6,122円 福島県 1.9万トン(全国5位)
7位 京都市 6,001円 京都府 — (統計対象外)
51位 和歌山市 3,671円 和歌山県 — (統計対象外)

上位6都市は、東北と長野の産地圏に集中している。

目を引くのは7位の京都市だ。京都府のりんごは作物統計で調査対象外となるほど生産量が少ない。産地から遠い京都市が、支出額では全国上位に入っている。

産地ほど「支出額の低下」が進んでいる

産地6都市のりんご支出額推移(2007-2025年)

19年分のデータを追うと、産地圏で支出額の低下が目立つ。

都市 ピーク(単年) 直近3年平均 下落率
福島市 12,555円(2009年) 6,122円 -51%
秋田市 11,403円(2007年) 6,512円 -43%
長野市 13,040円(2014年) 8,220円 -37%
盛岡市 12,449円(2012年) 8,095円 -35%
山形市 9,283円(2007年) 6,759円 -27%
青森市 10,597円(2007年) 8,246円 -22%

福島市は半減だ。2009年に1万2千円を超えていたのが、直近3年平均では6,000円台に落ちた。秋田市も4割減っている。

一方、全国平均は19年間でわずか5%の減少にとどまる。産地圏の落ち方はかなり大きい。

下落率が最小の青森市でも、ピークの10,597円(2007年)から直近3年平均の8,246円へと、19年で2割以上減少している。産地圏の中で比較的耐えている青森市ですら、この水準だ。

増えている地域もある

2007-09年と2023-25年のりんご支出額変化率

全国平均がほぼ横ばいで、産地圏が下がっているなら、どこかで増えている地域があるはずだ。

47の観測都市の19年間の変化率を調べると、16都市でりんご支出額が増えていた(そのうち+1%以上の明確な増加は14都市)。

増加TOP5 2007-09平均 2023-25平均 変化率
京都市 4,399円 6,001円 +36%
長崎市 4,456円 5,286円 +19%
千葉市 4,854円 5,580円 +15%
東京都区部 4,157円 4,760円 +15%
岐阜市 4,491円 5,136円 +14%

京都市の+36%が目を引く。産地ではない地域で支出額が伸びている。

東京都区部や千葉市の増加も興味深い。産地との距離よりも、「どのように買われているか」が数字を左右しているように見える。

関東圏の都市部で支出額が伸びている事実は、りんごが「地元の果物」から「全国で買う果物」へと位置づけを変えている可能性を示している。

何が起きているのか

数字からは3つの仮説が読み取れる。

理由1 — 産地では「買わなくなった」だけで、食べなくなったとは限らない。
りんごが身近すぎるのだ。もらう、直売所で買う、家庭内で分け合う。家計調査は「支出額」を測る統計なので、贈答や無償でもらった分は数字に出ない。産地圏で支出額が下がっていても、それだけで「りんご離れ」とは言い切れない。

理由2 — 非産地では「買う果物」としての存在感が高まった。
ブランドりんごや高単価商品の流通が広がり、都市部ではりんごが「自分で選んで買う果物」になっている可能性がある。支出額の上昇は、数量だけでなく単価の変化も反映する。量販店や百貨店で流通する「ふじ」「シナノゴールド」「王林」などの品種は、1個200〜300円の価格帯で並んでいる。

理由3 — 京都市や東京都区部では贈答や季節需要も効いているかもしれない。
冬の果物需要、贈答需要、百貨店や量販店での販売環境などが、支出額を押し上げている可能性がある。ただし、ここは家計調査だけでは断定できないので、仮説として見るのが妥当だ。

りんごの40年

視野をさらに広げてみる。

りんご以外の果物にも目を向けると、40年で顔ぶれが入れ替わっている。1985年に8,893円あったみかんの年間支出額は、2025年には4,598円まで減り、ほぼ半減している。りんごも6,930円から4,812円へと3割減った。一方、同じ40年でバナナは3,285円から6,398円へとほぼ2倍に伸び、ぶどうも3,575円から3,722円で持ちこたえている。買われる果物の地図は、40年で静かに塗り替えられてきた。

りんごは今も青森県が圧倒的な産地だ。支出額でも青森市が1位を守っている。だが、変化率を見ると、産地圏では支出額が下がり、非産地の都市部では伸びている地域もある。

りんごは「どこで作られているか」だけではなく、「どこで買われるか」で見ると、また違う姿が見えてくる。

全52観測都市ランキング

家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。

順位 名称 2023〜2025年平均 順位 名称 2023〜2025年平均
1 青森市 8,246円 27 鳥取市 4,612円
2 長野市 8,220円 28 富山市 4,556円
3 盛岡市 8,095円 29 横浜市 4,555円
4 山形市 6,759円 30 高松市 4,550円
5 秋田市 6,512円 31 金沢市 4,531円
6 福島市 6,122円 32 大阪市 4,519円
7 京都市 6,001円 33 松山市 4,508円
8 前橋市 5,874円 34 名古屋市 4,440円
9 奈良市 5,735円 35 鹿児島市 4,440円
10 千葉市 5,580円 36 仙台市 4,411円
11 神戸市 5,398円 37 高知市 4,326円
12 水戸市 5,328円 38 堺市 4,309円
13 長崎市 5,286円 39 静岡市 4,290円
14 宮崎市 5,261円 40 北九州市 4,241円
15 松江市 5,234円 41 熊本市 4,222円
16 岐阜市 5,136円 42 札幌市 4,205円
17 徳島市 5,129円 43 浜松市 4,068円
18 広島市 5,011円 44 甲府市 4,024円
19 相模原市 4,977円 45 津市 4,006円
20 さいたま市 4,947円 46 福井市 3,983円
21 宇都宮市 4,933円 47 川崎市 3,837円
22 新潟市 4,922円 48 岡山市 3,801円
23 福岡市 4,892円 49 那覇市 3,794円
24 山口市 4,848円 50 佐賀市 3,746円
25 東京都区部 4,760円 51 大分市 3,676円
26 大津市 4,630円 52 和歌山市 3,671円

もっと詳しく

データ出典: 総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・県庁所在市等) / 農林水産省「作物統計」