ものがたり
2023-2025年平均(3年平均)

天ぷら・フライ支出額1位は福井市18,276円。日本海側3市が独走、最下位奈良の1.72倍差。

公開日: 2026-05-16
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天ぷら・フライ支出額1位は福井市18,276円。日本海側3市が独走、最下位奈良の1.72倍差。

天ぷら・フライ支出額1位は福井市18,276円。日本海側3市が独走、最下位奈良の1.72倍差。

「天ぷら・フライ」と聞くと、家庭の料理を思い浮かべる人が多いかもしれない。だが家計調査の品目分類では、これはスーパー・惣菜店・コンビニで購入した出来合いの天ぷら・フライを指す。家庭で揚げた分は食材費(小麦粉・油・魚介・野菜)に分散して別カウントだ。

この「惣菜としての天ぷら・フライ」を3年平均で都道府県庁所在市・政令指定都市52市に並べると、1位は福井市18,276円。2位新潟市17,767円、3位富山市17,428円と、北陸〜中部日本海側の3市が独走で並ぶ。

4位大分市15,861円との差は約2,400円で、上位3市は明確に1段抜けている。最下位の奈良市10,652円との差は1.72倍。全国平均13,590円の1.34倍に位置する。

福井18,276円、新潟17,767円、富山17,428円、日本海側3市が独走

天ぷら・フライ支出額ランキング 2023-2025年 3年平均

上位10都市を並べると、上位3市と4位以下の間に明確な段差がある。

順位 観測都市 3年平均支出額
1位 福井市 18,276円
2位 新潟市 17,767円
3位 富山市 17,428円
4位 大分市 15,861円
5位 山形市 15,384円
6位 浜松市 15,186円
7位 静岡市 15,165円
8位 青森市 14,830円
9位 大阪市 14,782円
10位 福島市 14,691円

1位福井と3位富山の差は848円、3位富山と4位大分の差は1,567円。上位3市は17,000円台後半でひと塊になり、4位以下は15,000円台中心の別の帯を形成している。

福井・新潟・富山の3市は地理的に隣接し、北陸〜中部日本海側というブロックを構成する。日本海の魚介を惣菜の主役に据える食文化、雪国の冬季における中食依存、共働き率の高さなど、共通する要因が複数考えられる。

なぜ日本海側3市が上位なのか

福井・新潟・富山の3市が独走する背景は、3つに分解して読むのが妥当だろう。いずれも家計調査の数字から因果は直接示せないが、有力な仮説として語られてきた。

1つめは魚介を主役にした惣菜文化。日本海側の3県は近海・沿岸の漁場が豊かで、地域のスーパー・惣菜店では小アジ・イカ・エビの天ぷら、サワラ・タラのフライなど、魚介ベースの揚げ物の品揃えが厚い。地元の鮮魚店・スーパーが惣菜部門で揚げ物を充実させてきた歴史があると見られる。

2つめは共働き世帯と中食の組み合わせ。北陸3県は全国的に共働き率が高い地域として知られる(特に福井県は共働き世帯率で長年全国上位)。家庭で揚げ物を一から準備するより、スーパーや惣菜店で買って帰るほうが合理的になりやすい。「家庭の食卓に揚げ物が並ぶ頻度」は変わらなくても、「どこで揚げるか」が外部化される構造が、惣菜支出額を押し上げる方向に働く。

3つめは雪国の中食依存。冬季に外出が制約される地域では、スーパーへのまとめ買い・週末調達の比重が大きく、惣菜・冷凍・チルドの取り回しが日常化する。揚げ物は冷めても再加熱で食べやすく、中食需要との親和性が高い品目の1つだ。

ただしこれら3つは複合要因で、家計調査の数字だけから個々の寄与度を切り分けることはできない。確実に言えるのは、「日本海側3市の家庭では、惣菜としての揚げ物支出が他地域より明確に多い」という観察事実だ。

反証例: 4位大分・5位山形・6位浜松、日本海側だけではない

天ぷら・フライ支出額の17年変化率(2007-09→2023-25年)

「日本海側だから上位」と単純化したくなるが、4位大分市15,861円、5位山形市15,384円、6位浜松市15,186円と、日本海側でない都市も4〜6位に入っている。山形は内陸盆地、大分は瀬戸内海・豊後水道側、浜松は太平洋側。

つまり「日本海側」は十分条件でも必要条件でもなく、惣菜文化の厚みは地域ブロックではなく都市単位で読む必要がある。大分は鶏天など固有の揚げ物文化、山形は芋煮文化と並んで惣菜揚げ物の選択肢が広い、浜松はうなぎ・遠州灘の魚介加工と惣菜流通が結びつく、といった都市固有の文脈がそれぞれ寄与している可能性がある。

逆に、9位大阪市14,782円・大阪府全体の惣菜文化(コロッケ・串カツ・天ぷら)も中位上位に食い込む。一方で同じ近畿でも47位京都市11,677円・52位奈良市10,652円と下位に沈む都市もある。都市ごとの惣菜流通の厚みと家庭の調理スタイルの組み合わせが、最終的な支出額の高低を決めている。

最下位は奈良市10,652円、1.72倍差

下位を見ると、近畿・四国・東北・東海の一部都市が並ぶ。

順位 観測都市 3年平均支出額
49位 松山市 11,343円
50位 秋田市 11,199円
51位 津市 11,196円
52位 奈良市 10,652円

最下位の奈良市10,652円は、1位福井市の約58%。差は1.72倍にとどまる。家計調査の品目で1位と最下位の差が2倍未満は珍しくはないが、上位3市の独走幅と下位の落ち込みを合わせると、惣菜の揚げ物に関する家庭の購買行動が地域でかなり異なることが見える。

奈良市の低位については、同じ関西圏でも京都・大阪・神戸とは異なる消費スタイルがあること、住宅地中心の構造で家庭調理比重が相対的に高い可能性などが背景として指摘されることがある。ただし家計調査単体からこれを断定はできない。

17年で全国平均+58.5%、惣菜・中食市場の拡大

天ぷら・フライ支出額の推移 2007-2025年

天ぷら・フライ支出額の全国平均は、2007〜2009年の3年平均8,573円から2023〜2025年の3年平均13,590円へと約+58.5%伸びている。

注目すべきは、この17年で家庭の調理品目ではなく、惣菜・中食品目として大きく成長したことだ。同期間で生鮮魚介・食用油など揚げ物の素材食品支出はほぼ横ばいか減少傾向。一方で惣菜全体(家計調査の「調理食品」分類)は大きく伸びている。家庭が「揚げ物を作る」から「揚げ物を買う」へとシフトした17年と読める。

転換点として読みやすいのは2点ある。1つは2010年代の共働き世帯率の本格上昇。週末まとめ買いと平日の調理時短が広がり、惣菜需要を押し上げた。もう1つは2020〜2022年のコロナ期の家庭内食増。外食機会が減った代わりに、家庭で食べる中食(弁当・惣菜)が拡大し、揚げ物もその一角を占めた。

ただしこれらは複合要因の合算で、家計調査の数字だけから因果を直接示すことはできない。確実に言えるのは、「家庭の食卓における惣菜揚げ物の位置が、この17年で構造的に大きくなった」という観察事実だ。

全52観測都市 天ぷら・フライ支出額ランキング

家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。

順位 名称 2023〜2025年平均 順位 名称 2023〜2025年平均
1 福井市 18,276円 27 堺市 13,537円
2 新潟市 17,767円 28 盛岡市 13,519円
3 富山市 17,428円 29 東京都区部 13,474円
4 大分市 15,861円 30 大津市 13,417円
5 山形市 15,384円 31 さいたま市 13,402円
6 浜松市 15,186円 32 相模原市 13,400円
7 静岡市 15,165円 33 前橋市 13,304円
8 青森市 14,830円 34 岡山市 13,221円
9 大阪市 14,782円 35 那覇市 13,203円
10 福島市 14,691円 36 岐阜市 12,982円
11 長崎市 14,472円 37 北九州市 12,845円
12 広島市 14,466円 38 和歌山市 12,783円
13 高知市 14,431円 39 長野市 12,518円
14 宮崎市 14,419円 40 横浜市 12,508円
15 高松市 14,345円 41 千葉市 12,456円
16 徳島市 14,321円 42 水戸市 12,393円
17 仙台市 14,300円 43 神戸市 12,285円
18 宇都宮市 14,050円 44 札幌市 12,202円
19 松江市 14,026円 45 鹿児島市 12,098円
20 熊本市 14,013円 46 名古屋市 12,072円
21 甲府市 13,976円 47 京都市 11,677円
22 川崎市 13,927円 48 福岡市 11,347円
23 山口市 13,897円 49 松山市 11,343円
24 金沢市 13,849円 50 秋田市 11,199円
25 佐賀市 13,833円 51 津市 11,196円
26 鳥取市 13,769円 52 奈良市 10,652円

福井18,276円、奈良10,652円、惣菜揚げ物の17年で+58%

福井市18,276円、新潟市17,767円、富山市17,428円、全国平均13,590円、最下位奈良市10,652円。日本海側3市が独走、1位と最下位で1.72倍。ただし4位大分・5位山形・6位浜松と日本海側でない都市も上位入りしており、「日本海側だから」だけでは説明できない都市単位の惣菜文化の厚みが背景にある。全国平均は17年で+58.5%伸び、家庭の食卓における揚げ物の調達経路が、家庭調理から惣菜・中食へと構造的にシフトしてきた。


もっと詳しく

データ出典: 総務省「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市・品目: 天ぷら・フライ=惣菜分類)

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