県庁所在地が最大都市でない県は5つ。福島市は、県内3位。

県庁所在地が最大都市でない県は5つ。福島市は、県内3位。
県庁所在地と聞くと、多くの人は「その県でいちばん大きな街」を思い浮かべる。
大阪府は大阪市、愛知県は名古屋市、福岡県は福岡市。ここまでは想像通りの並びだ。
ところが、47都道府県を並べてみると、県庁所在地が県内最大都市ではない県が5つある。福島・群馬・静岡・三重・山口。数字にするとわずか5県だが、福島県にいたっては県庁所在地の福島市が「県内3位」の都市だった。
県庁所在地が県内最大都市でない5県

令和2年国勢調査(2020年)で、5県の県庁所在地と、県内最大都市の人口を並べる。
| 県 | 県庁所在地(人口) | 県内最大都市(人口) | 差 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 山口県 | 山口市(193,966) | 下関市(255,051) | +61,085 | 1.31倍 |
| 福島県 | 福島市(282,693) | いわき市(332,931) | +50,238 | 1.18倍 |
| 静岡県 | 静岡市(693,389) | 浜松市(790,718) | +97,329 | 1.14倍 |
| 群馬県 | 前橋市(332,149) | 高崎市(372,973) | +40,824 | 1.12倍 |
| 三重県 | 津市(274,537) | 四日市市(305,424) | +30,887 | 1.11倍 |
差の絶対値でいえば最大は静岡県の約9.7万人差、倍率では山口県の1.31倍差が最も大きい。いずれの県も、今回の国勢調査だけの一時的な逆転ではなく、「県庁と最大都市が別」という状態が長く続いている県ばかりだ。
これに東京都を加えるかどうかは扱いが難しい。東京都の県庁所在地は制度上「東京都区部」、つまり23区全体を指す扱いで、単一の市として数字を比較しにくい。市単位でいえば、東京都内の最大市は八王子市(579,355人)で、町田市(431,079人)がこれに続く。本記事では、東京都は通常の47県比較の枠から外して扱い、東京を除いた46道府県で「県庁=最大」41県、「県庁≠最大」5県というかたちで整理する。
福島市は、県内3位
5県の中でもう一段ねじれているのが福島県だ。
| 順位 | 福島県内の市 | 人口 |
|---|---|---|
| 1位 | いわき市 | 332,931 |
| 2位 | 郡山市 | 327,692 |
| 3位 | 福島市 | 282,693 |
福島市より大きな市が、県内に2つある。1位のいわき市は太平洋岸にあり、漁港・港湾・工業の集積で人口を伸ばしてきた。2位の郡山市は東北新幹線の要所で、商業・物流・製造業が集まる県内の経済中心地だ。県庁のある福島市は県北部の盆地に位置し、政治・行政機能を担いつつも、人口ではこの2つに次ぐ3番手という立ち位置になっている。
47都道府県のうち「県庁所在地が県内3位」という構図は、福島県だけの特徴だ。残りの4県(群馬・静岡・三重・山口)はいずれも県庁が県内2位で、1位の都市とは「2強」の関係にある。行政の顔である県庁の街が、県内でここまで人口順位を落としているのは、日本の都道府県の中で福島県ただ1つだ。
差が最も大きいのは山口県
5県の中で、倍率が最も開いているのは山口県だ。
最大都市の下関市(255,051人)は、県庁の山口市(193,966人)の1.31倍。山口市は県内2位、県内3位には宇部市が続く。
山口市は江戸時代に大内氏の城下町として栄え、明治の廃藩置県でそのまま山口県の県庁所在地となった。下関は本州最西端の港町で、関門海峡を挟んで九州とつながる要衝。近代以降は水産・海運の拠点として人口を伸ばし、県庁所在地を上回った経緯がある。
県内で「歴史のある街」と「経済活動の集まる街」が分かれているケースは、群馬県の前橋と高崎、静岡県の静岡と浜松にも似た構図で見られる。前橋は古くからの県庁所在地、高崎は新幹線と関越自動車道が交わる交通の要衝。静岡は駿府城の城下町、浜松はヤマハ・スズキ・ホンダといった製造業を抱える工業都市。どちらの県でも、県庁所在地と最大都市が互いに補完するかたちで共存している。
他の41県は県庁が最大。ただし接戦の県もある
残る41県(東京都を除く)では、県庁所在地が県内最大都市だ。ただし「県庁1位」と言っても、2位の都市と接戦という県はいくつかある。
| 県 | 県庁(1位) | 県内2位 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 茨城県 | 水戸市(270,685) | つくば市(241,656) | 1.12倍 |
| 島根県 | 松江市(203,616) | 出雲市(172,775) | 1.18倍 |
| 青森県 | 青森市(275,232) | 八戸市(223,415) | 1.23倍 |
| 鳥取県 | 鳥取市(188,465) | 米子市(147,317) | 1.28倍 |
茨城県は水戸市とつくば市の差が1.12倍。これは「県庁が最大ではない」5県の静岡(1.14倍)や群馬(1.12倍)と同水準の僅差だ。
これらの県では、国勢調査のたびに「県庁1位」が揺らぐ可能性がある。とくにつくば市は研究学園都市として人口増が続いており、2025年国勢調査の公表結果次第では、水戸市との順位が入れ替わる局面も想定される。
全47都道府県 県庁所在地と県内最大都市
47都道府県を並べると、県庁所在地と県内最大都市の関係は以下のようになる。
| 都道府県 | 県庁所在地 | 県内最大都市 | 一致 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 札幌市 | 札幌市 | ✓ |
| 青森県 | 青森市 | 青森市 | ✓ |
| 岩手県 | 盛岡市 | 盛岡市 | ✓ |
| 宮城県 | 仙台市 | 仙台市 | ✓ |
| 秋田県 | 秋田市 | 秋田市 | ✓ |
| 山形県 | 山形市 | 山形市 | ✓ |
| 福島県 | 福島市 | いわき市 | ✗ |
| 茨城県 | 水戸市 | 水戸市 | ✓ |
| 栃木県 | 宇都宮市 | 宇都宮市 | ✓ |
| 群馬県 | 前橋市 | 高崎市 | ✗ |
| 埼玉県 | さいたま市 | さいたま市 | ✓ |
| 千葉県 | 千葉市 | 千葉市 | ✓ |
| 東京都 | 東京都区部 | 八王子市(市単位) | — |
| 神奈川県 | 横浜市 | 横浜市 | ✓ |
| 新潟県 | 新潟市 | 新潟市 | ✓ |
| 富山県 | 富山市 | 富山市 | ✓ |
| 石川県 | 金沢市 | 金沢市 | ✓ |
| 福井県 | 福井市 | 福井市 | ✓ |
| 山梨県 | 甲府市 | 甲府市 | ✓ |
| 長野県 | 長野市 | 長野市 | ✓ |
| 岐阜県 | 岐阜市 | 岐阜市 | ✓ |
| 静岡県 | 静岡市 | 浜松市 | ✗ |
| 愛知県 | 名古屋市 | 名古屋市 | ✓ |
| 三重県 | 津市 | 四日市市 | ✗ |
| 滋賀県 | 大津市 | 大津市 | ✓ |
| 京都府 | 京都市 | 京都市 | ✓ |
| 大阪府 | 大阪市 | 大阪市 | ✓ |
| 兵庫県 | 神戸市 | 神戸市 | ✓ |
| 奈良県 | 奈良市 | 奈良市 | ✓ |
| 和歌山県 | 和歌山市 | 和歌山市 | ✓ |
| 鳥取県 | 鳥取市 | 鳥取市 | ✓ |
| 島根県 | 松江市 | 松江市 | ✓ |
| 岡山県 | 岡山市 | 岡山市 | ✓ |
| 広島県 | 広島市 | 広島市 | ✓ |
| 山口県 | 山口市 | 下関市 | ✗ |
| 徳島県 | 徳島市 | 徳島市 | ✓ |
| 香川県 | 高松市 | 高松市 | ✓ |
| 愛媛県 | 松山市 | 松山市 | ✓ |
| 高知県 | 高知市 | 高知市 | ✓ |
| 福岡県 | 福岡市 | 福岡市 | ✓ |
| 佐賀県 | 佐賀市 | 佐賀市 | ✓ |
| 長崎県 | 長崎市 | 長崎市 | ✓ |
| 熊本県 | 熊本市 | 熊本市 | ✓ |
| 大分県 | 大分市 | 大分市 | ✓ |
| 宮崎県 | 宮崎市 | 宮崎市 | ✓ |
| 鹿児島県 | 鹿児島市 | 鹿児島市 | ✓ |
| 沖縄県 | 那覇市 | 那覇市 | ✓ |
41県で県庁所在地と県内最大都市が一致し、5県で一致しない。東京都は「都区部」という特殊な扱いで、単純比較の対象から外れる(41+5+東京=47)。
41県は県庁が最大。でも、永遠ではない
「県庁所在地=県内最大都市」という直感は、東京都を除いた46道府県のうち41県で成り立ち、5県では成り立たない。そして接戦の県を含めれば、この構図はいま一度動く可能性を孕んでいる。
県庁が置かれた場所には、江戸時代の城下町や明治の行政再編といった歴史がそれぞれある。一方で、最大都市の地位は、近代以降の鉄道・港湾・工業の集積によって移り変わってきた。歴史の街と、いまの街の中心。両者がずれている県が5つあること、そしてずれかけている県がいくつもあることは、いまの日本の地図を見るうえでの小さな発見だ。
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データ出典: 総務省「令和2年国勢調査」(2020年、市町村別人口)