47ものがたり
2020年

県庁所在地が最大都市でない県は5つ。福島市は、県内3位。

公開日: 2026-04-30
#人口#国勢調査#県庁所在地#地方都市#地理
県庁所在地が最大都市でない県は5つ。福島市は、県内3位。

県庁所在地が最大都市でない県は5つ。福島市は、県内3位。

県庁所在地と聞くと、多くの人は「その県でいちばん大きな街」を思い浮かべる。

大阪府は大阪市、愛知県は名古屋市、福岡県は福岡市。ここまでは想像通りの並びだ。

ところが、47都道府県を並べてみると、県庁所在地が県内最大都市ではない県が5つある。福島・群馬・静岡・三重・山口。数字にするとわずか5県だが、福島県にいたっては県庁所在地の福島市が「県内3位」の都市だった。

県庁所在地が県内最大都市でない5県

人口(2020年・市町村別)

令和2年国勢調査(2020年)で、5県の県庁所在地と、県内最大都市の人口を並べる。

県庁所在地(人口) 県内最大都市(人口) 倍率
山口県 山口市(193,966) 下関市(255,051) +61,085 1.31倍
福島県 福島市(282,693) いわき市(332,931) +50,238 1.18倍
静岡県 静岡市(693,389) 浜松市(790,718) +97,329 1.14倍
群馬県 前橋市(332,149) 高崎市(372,973) +40,824 1.12倍
三重県 津市(274,537) 四日市市(305,424) +30,887 1.11倍

差の絶対値でいえば最大は静岡県の約9.7万人差、倍率では山口県の1.31倍差が最も大きい。いずれの県も、今回の国勢調査だけの一時的な逆転ではなく、「県庁と最大都市が別」という状態が長く続いている県ばかりだ。

これに東京都を加えるかどうかは扱いが難しい。東京都の県庁所在地は制度上「東京都区部」、つまり23区全体を指す扱いで、単一の市として数字を比較しにくい。市単位でいえば、東京都内の最大市は八王子市(579,355人)で、町田市(431,079人)がこれに続く。本記事では、東京都は通常の47県比較の枠から外して扱い、東京を除いた46道府県で「県庁=最大」41県、「県庁≠最大」5県というかたちで整理する。

福島市は、県内3位

5県の中でもう一段ねじれているのが福島県だ。

順位 福島県内の市 人口
1位 いわき市 332,931
2位 郡山市 327,692
3位 福島市 282,693

福島市より大きな市が、県内に2つある。1位のいわき市は太平洋岸にあり、漁港・港湾・工業の集積で人口を伸ばしてきた。2位の郡山市は東北新幹線の要所で、商業・物流・製造業が集まる県内の経済中心地だ。県庁のある福島市は県北部の盆地に位置し、政治・行政機能を担いつつも、人口ではこの2つに次ぐ3番手という立ち位置になっている。

47都道府県のうち「県庁所在地が県内3位」という構図は、福島県だけの特徴だ。残りの4県(群馬・静岡・三重・山口)はいずれも県庁が県内2位で、1位の都市とは「2強」の関係にある。行政の顔である県庁の街が、県内でここまで人口順位を落としているのは、日本の都道府県の中で福島県ただ1つだ。

差が最も大きいのは山口県

5県の中で、倍率が最も開いているのは山口県だ。

最大都市の下関市(255,051人)は、県庁の山口市(193,966人)の1.31倍。山口市は県内2位、県内3位には宇部市が続く。

山口市は江戸時代に大内氏の城下町として栄え、明治の廃藩置県でそのまま山口県の県庁所在地となった。下関は本州最西端の港町で、関門海峡を挟んで九州とつながる要衝。近代以降は水産・海運の拠点として人口を伸ばし、県庁所在地を上回った経緯がある。

県内で「歴史のある街」と「経済活動の集まる街」が分かれているケースは、群馬県の前橋と高崎、静岡県の静岡と浜松にも似た構図で見られる。前橋は古くからの県庁所在地、高崎は新幹線と関越自動車道が交わる交通の要衝。静岡は駿府城の城下町、浜松はヤマハ・スズキ・ホンダといった製造業を抱える工業都市。どちらの県でも、県庁所在地と最大都市が互いに補完するかたちで共存している。

他の41県は県庁が最大。ただし接戦の県もある

残る41県(東京都を除く)では、県庁所在地が県内最大都市だ。ただし「県庁1位」と言っても、2位の都市と接戦という県はいくつかある。

県庁(1位) 県内2位 倍率
茨城県 水戸市(270,685) つくば市(241,656) 1.12倍
島根県 松江市(203,616) 出雲市(172,775) 1.18倍
青森県 青森市(275,232) 八戸市(223,415) 1.23倍
鳥取県 鳥取市(188,465) 米子市(147,317) 1.28倍

茨城県は水戸市とつくば市の差が1.12倍。これは「県庁が最大ではない」5県の静岡(1.14倍)や群馬(1.12倍)と同水準の僅差だ。

これらの県では、国勢調査のたびに「県庁1位」が揺らぐ可能性がある。とくにつくば市は研究学園都市として人口増が続いており、2025年国勢調査の公表結果次第では、水戸市との順位が入れ替わる局面も想定される。

全47都道府県 県庁所在地と県内最大都市

47都道府県を並べると、県庁所在地と県内最大都市の関係は以下のようになる。

都道府県 県庁所在地 県内最大都市 一致
北海道 札幌市 札幌市
青森県 青森市 青森市
岩手県 盛岡市 盛岡市
宮城県 仙台市 仙台市
秋田県 秋田市 秋田市
山形県 山形市 山形市
福島県 福島市 いわき市
茨城県 水戸市 水戸市
栃木県 宇都宮市 宇都宮市
群馬県 前橋市 高崎市
埼玉県 さいたま市 さいたま市
千葉県 千葉市 千葉市
東京都 東京都区部 八王子市(市単位)
神奈川県 横浜市 横浜市
新潟県 新潟市 新潟市
富山県 富山市 富山市
石川県 金沢市 金沢市
福井県 福井市 福井市
山梨県 甲府市 甲府市
長野県 長野市 長野市
岐阜県 岐阜市 岐阜市
静岡県 静岡市 浜松市
愛知県 名古屋市 名古屋市
三重県 津市 四日市市
滋賀県 大津市 大津市
京都府 京都市 京都市
大阪府 大阪市 大阪市
兵庫県 神戸市 神戸市
奈良県 奈良市 奈良市
和歌山県 和歌山市 和歌山市
鳥取県 鳥取市 鳥取市
島根県 松江市 松江市
岡山県 岡山市 岡山市
広島県 広島市 広島市
山口県 山口市 下関市
徳島県 徳島市 徳島市
香川県 高松市 高松市
愛媛県 松山市 松山市
高知県 高知市 高知市
福岡県 福岡市 福岡市
佐賀県 佐賀市 佐賀市
長崎県 長崎市 長崎市
熊本県 熊本市 熊本市
大分県 大分市 大分市
宮崎県 宮崎市 宮崎市
鹿児島県 鹿児島市 鹿児島市
沖縄県 那覇市 那覇市

41県で県庁所在地と県内最大都市が一致し、5県で一致しない。東京都は「都区部」という特殊な扱いで、単純比較の対象から外れる(41+5+東京=47)。

41県は県庁が最大。でも、永遠ではない

「県庁所在地=県内最大都市」という直感は、東京都を除いた46道府県のうち41県で成り立ち、5県では成り立たない。そして接戦の県を含めれば、この構図はいま一度動く可能性を孕んでいる。

県庁が置かれた場所には、江戸時代の城下町や明治の行政再編といった歴史がそれぞれある。一方で、最大都市の地位は、近代以降の鉄道・港湾・工業の集積によって移り変わってきた。歴史の街と、いまの街の中心。両者がずれている県が5つあること、そしてずれかけている県がいくつもあることは、いまの日本の地図を見るうえでの小さな発見だ。


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データ出典: 総務省「令和2年国勢調査」(2020年、市町村別人口)