納豆の全国平均は40年で約2.6倍。前期22年で2倍化、後期17年は3割増にとどまる。

納豆の全国平均は40年で約2.6倍。前期22年で2倍化、後期17年は3割増にとどまる。
家計調査の品目のなかで、40年スパンで見たときに「2倍以上に伸び続けた」品目は限られる。納豆はその例外的な1つだ。
総務省「家計調査」の3年平均で、納豆の全国平均支出額を40年スパンで追うと、1985-87年は1,802円、2023-25年は4,759円。約2.64倍(+164%)まで伸びている。
ただし、その伸びは時間に対して均等ではない。前半の22年と後半の17年では、まったく違う速さで動いている。
全国平均は40年で2.6倍、伸びは前期に集中

納豆の全国平均支出額の3年平均を、40年スパンで3つの時点で並べると次のようになる。
| 期間 | 全国平均(3年平均) | 起点比 |
|---|---|---|
| 1985-87年 | 1,802円 | — |
| 2007-09年 | 3,693円 | 2.05倍 |
| 2023-25年 | 4,759円 | 2.64倍 |
前期22年(1985-87 → 2007-09)で +105%(2倍化)、後期17年(2007-09 → 2023-25)で +29%。同じ40年でも、伸びの大半は前期に集中している。
家計調査の他の品目と比べると、この前期2倍化は突出した動きだ。米・ご飯類は40年でほぼ横ばいか減少、肉類でも豚肉・鶏肉が2倍前後、ワイン・コーヒーなど洋風品目でも同程度の伸びにとどまる。納豆の前期成長は「健康食品としての定着」と「日本の食卓における位置づけの変化」が最も明確に出た例の1つと言える。
後期17年の伸びが+29%に落ちている点も重要だ。すでに「全国の家庭が日常的に買う品目」になった後で、これ以上の劇的拡大は起きにくい段階に入っているとみるのが自然だろう。
なぜ40年で大きく伸びたのか
納豆が40年で2.6倍まで伸びた背景は、3つに分解して考えられる。いずれも家計調査の数字から因果は直接示せないが、有力な仮説として語られてきた。
1つめは健康志向の高まり。発酵食品・大豆製品としての栄養価がメディアや栄養指導の中で強調されるようになり、「健康のために食べるべき食品」という位置づけが定着した。1990年代以降の機能性食品ブーム、2000年代の血液サラサラブームなど、納豆が健康文脈で取り上げられた局面は多い。
2つめは価格と調理利便性。納豆は1パック数十円〜100円台で、開けてかき混ぜるだけで食べられる。共働き世帯の増加、単身世帯の拡大、朝食の簡便化という生活スタイルの変化に対して、調理ハードルの低さが強みになった可能性が高い。
3つめは冷蔵流通インフラの整備。納豆は冷蔵管理が必須で、戦後しばらくは関東・東北以外で安定供給するのが難しかった。冷蔵物流とコンビニ・スーパーの全国展開が進んだ1990〜2000年代以降、西日本でも常時手に入る商品になった。これが「東日本の食品」から「全国の食品」への転換を支えた可能性がある。
ただしこれらは複合要因の合算で、家計調査の数字だけでは個々の寄与度を切り分けられない。確実に言えるのは、「日本の家庭で納豆が日常食品の一角を占めるようになった40年」という観察事実だ。
反証例: 上位は東北のまま、ただし西日本も追走中

「全国で2.6倍に伸びた」と書くと、東西格差が縮まったように聞こえる。しかし2023-25年の都市別ランキングを見ると、上位は40年前と同じく東北・北関東勢で固まっている。
| 順位 | 観測都市 | 3年平均支出額 |
|---|---|---|
| 1位 | 福島市 | 7,102円 |
| 2位 | 盛岡市 | 6,950円 |
| 3位 | 秋田市 | 6,875円 |
| 4位 | 水戸市 | 6,797円 |
| 5位 | 青森市 | 6,732円 |
最下位52位は和歌山市2,468円で、1位福島との差は2.88倍。「上位の構造」は変わっていない。
ただし変化率で見ると違う景色が出る。那覇市は2007-09年2,555円から2023-25年4,271円へ+67%、岡山市は2,671円から4,207円へ+57%と、西日本の伸び率が全国平均(+29%)を大きく上回っている。絶対額の逆転には至っていないが、東西格差は縮小方向に動いている。
「上位は変わらないが、下位の伸びが上位を追い上げている」という構図で、納豆は40年スパンで「全国食品化」が確実に進んだ品目だと読める。
全47都道府県・主要52都市ランキング
家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。
| 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 福島市 | 7,102円 | 27 | 福井市 | 4,748円 | |
| 2 | 盛岡市 | 6,950円 | 28 | 佐賀市 | 4,744円 | |
| 3 | 秋田市 | 6,875円 | 29 | 相模原市 | 4,691円 | |
| 4 | 水戸市 | 6,797円 | 30 | 大分市 | 4,637円 | |
| 5 | 青森市 | 6,732円 | 31 | 長崎市 | 4,507円 | |
| 6 | 山形市 | 6,461円 | 32 | 名古屋市 | 4,457円 | |
| 7 | 長野市 | 6,384円 | 33 | 宮崎市 | 4,372円 | |
| 8 | 前橋市 | 6,383円 | 34 | 北九州市 | 4,341円 | |
| 9 | 仙台市 | 6,195円 | 35 | 那覇市 | 4,271円 | |
| 10 | 富山市 | 6,110円 | 36 | 津市 | 4,212円 | |
| 11 | 宇都宮市 | 6,087円 | 37 | 岡山市 | 4,207円 | |
| 12 | 熊本市 | 6,008円 | 38 | 山口市 | 4,199円 | |
| 13 | さいたま市 | 5,597円 | 39 | 大津市 | 4,165円 | |
| 14 | 新潟市 | 5,420円 | 40 | 奈良市 | 4,069円 | |
| 15 | 甲府市 | 5,373円 | 41 | 京都市 | 3,921円 | |
| 16 | 浜松市 | 5,321円 | 42 | 松江市 | 3,881円 | |
| 17 | 千葉市 | 5,189円 | 43 | 松山市 | 3,847円 | |
| 18 | 東京都区部 | 5,102円 | 44 | 鳥取市 | 3,842円 | |
| 19 | 静岡市 | 5,093円 | 45 | 広島市 | 3,723円 | |
| 20 | 金沢市 | 5,078円 | 46 | 神戸市 | 3,491円 | |
| 21 | 福岡市 | 5,067円 | 47 | 高松市 | 3,468円 | |
| 22 | 札幌市 | 5,066円 | 48 | 徳島市 | 3,282円 | |
| 23 | 鹿児島市 | 4,944円 | 49 | 大阪市 | 3,199円 | |
| 24 | 横浜市 | 4,785円 | 50 | 高知市 | 3,176円 | |
| 25 | 川崎市 | 4,776円 | 51 | 堺市 | 3,137円 | |
| 26 | 岐阜市 | 4,772円 | 52 | 和歌山市 | 2,468円 |
1985年1,802円、2023-25年4,759円、その間に40年
納豆の全国平均は40年で1,802円から4,759円へ、約2.64倍。家計調査の品目のなかでは突出した長期成長だ。ただし伸びの大半は1985-2007年の前期22年に集中(+105%)、2007-2025年の後期17年は+29%。健康志向・調理利便性・冷蔵流通の3要因が重なって戦後の食卓に定着するまでが前期、定着後の安定成長が後期、と読める。今は「全国の食品」になった納豆だが、上位は依然として東北・北関東で、絶対額の東西格差は残る。ただし那覇+67%・岡山+58%と、西日本の追走は続いている。次の17年でこの追走がどこまで進むか、その読みは家計調査の3年平均が静かに記録していく。
もっと詳しく
データ出典: 総務省「家計調査」(1985〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市)



