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2023-2025年平均(3年平均)

長崎市のカステラ支出額は5,906円。2位の水戸市1,270円を4.7倍で引き離す独走。

公開日: 2026-05-12
#カステラ#長崎#南蛮菓子#家計調査#3年平均
長崎市のカステラ支出額は5,906円。2位の水戸市1,270円を4.7倍で引き離す独走。

長崎市のカステラ支出額は5,906円。2位の水戸市1,270円を4.7倍で引き離す独走。

家計調査で、これほど1位が独走している品目は珍しい。

直近3年(2023〜2025年)平均で、都道府県庁所在市及び政令指定都市のカステラ支出額を並べると、1位は長崎市の年間5,906円。2位の水戸市は1,270円で、差は4.7倍に達する。

全国平均は897円。長崎市はその6.58倍にあたる。最下位の青森市(449円)と比べると、13倍の差がある。

上位に並ぶ都市は、2位水戸市、3位富山市1,224円、4位津市1,222円、5位堺市1,220円。2〜5位までがほぼ同水準で、2位以下は互いに数十円の違いしかない。その中で、長崎市だけが別次元の位置にある。

1位と2位の差がこれほど開いている指標は珍しい

上位5都市を並べると、その差が際立つ。

順位 観測都市 3年平均支出額 長崎市比
1位 長崎市 5,906円
2位 水戸市 1,270円 21.5%
3位 富山市 1,224円 20.7%
4位 津市 1,222円 20.7%
5位 堺市 1,220円 20.7%

長崎市の値は、2位以下のおよそ5倍。他の家計調査品目で、1位が2位の倍以上離れているのは、りんごの産地集中や日本酒の蔵元集中など、限られた例しかない。カステラの長崎一強は、統計の上ではかなり異例の構図だ。

なぜ長崎市だけが高いのか

カステラは16世紀にポルトガルから日本に伝わった南蛮菓子で、その入口が長崎だったとされる。以来、長崎では贈答品や土産物としてのカステラが地元文化の一部になってきた。

家計調査は、家庭での支出額を測る統計だ。観光客が買う土産物は直接反映されないが、地元住民が日常的にカステラを買う頻度と金額が、この数字に表れていると考えられる。贈答用、来客用、自宅用。用途の幅が長崎市では特に広いように見える。

理由1 — 地元メーカーの密度と価格帯の厚み。
福砂屋(1624年創業)、松翁軒(1681年創業)、文明堂(1900年創業)といった老舗から、地域密着のカステラ専門店まで、長崎市には多様なメーカーが集中している。家庭用・贈答用・自宅用で価格帯と商品サイズの選択肢が広く、日常的に買いやすい環境がある。

理由2 — 冠婚葬祭・法要での定番。
長崎県内では、冠婚葬祭や法要の贈り物として長崎カステラが定着している。地元住民の家計にとって、カステラは「日用食品に近い贈答菓子」として組み込まれている可能性がある。

理由3 — 「和三盆」「ザラメ」付きなどの差別化。
長崎のカステラは底にザラメを残す製法や、五三焼などの格付けで差別化されており、全国的なカステラ(長崎以外のメーカーのもの)とは価格帯が異なる。地元での購入単価が高めであることも、支出額を押し上げているとみられる。

最下位は青森市の449円

下位を見ると、長崎市の「独走」がいっそう際立つ。

順位 観測都市 3年平均支出額 長崎市比
49位 長野市 540円 9.1%
50位 盛岡市 475円 8.0%
51位 山形市 455円 7.7%
52位 青森市 449円 7.6%

最下位の青森市と長崎市の差は、5,906 ÷ 449 = 13.2倍。北東北の3都市が最下位グループに並び、カステラ購入の地域格差は同じ日本の中で一桁倍の開きを残している。

19年間の推移

2007〜2009年平均と2023〜2025年平均で比べると、全国平均は921円から897円へとほぼ横ばい(-2.6%の微減)。和菓子全般で支出額が下がっている長期トレンドのなかでは、カステラは比較的安定している品目に入る。

長崎市も同期間で6,248円から5,906円へと約-5.5%の微減。長崎の単年データを見ると、2007年が5,530円、2008年5,984円、2009年7,229円と年によって1,000円以上ぶれることがあり、3年平均で見ると6千円前後の高水準を長期維持してきたことがわかる。

全国平均と比べた倍率(全国平均比)は、2007〜2009年平均で約6.78倍、2023〜2025年平均で約6.58倍。長崎の独走幅はわずかに縮んだが、依然として2位以下を5倍以上引き離す独走構造は維持されている。

全52観測都市ランキング

家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。

順位 名称 2023〜2025年平均 順位 名称 2023〜2025年平均
1 長崎市 5,906円 27 奈良市 832円
2 水戸市 1,270円 28 岐阜市 830円
3 富山市 1,224円 29 山口市 812円
4 津市 1,222円 30 熊本市 797円
5 堺市 1,220円 31 宮崎市 791円
6 千葉市 1,168円 32 札幌市 779円
7 京都市 1,147円 33 広島市 773円
8 東京都区部 1,092円 34 前橋市 744円
9 名古屋市 1,085円 35 仙台市 724円
10 高松市 991円 36 和歌山市 719円
11 高知市 991円 37 甲府市 717円
12 さいたま市 961円 38 大分市 699円
13 神戸市 949円 39 福島市 685円
14 岡山市 938円 40 鹿児島市 684円
15 福井市 927円 41 宇都宮市 674円
16 那覇市 923円 42 福岡市 667円
17 徳島市 912円 43 大津市 662円
18 佐賀市 880円 44 松山市 627円
19 相模原市 876円 45 新潟市 607円
20 浜松市 864円 46 秋田市 603円
21 横浜市 861円 47 松江市 602円
22 大阪市 860円 48 鳥取市 601円
23 静岡市 856円 49 長野市 540円
24 北九州市 845円 50 盛岡市 475円
25 金沢市 842円 51 山形市 455円
26 川崎市 833円 52 青森市 449円

長崎5,906円、水戸1,270円、青森449円

長崎市5,906円、水戸市1,270円、最下位の青森市449円。全国平均897円。1位と2位で4.7倍、1位と最下位で13倍。家計調査に400以上ある品目の中で、これほど1位が独走している例は珍しい。カステラが400年かけて長崎に根づいた物語が、現在の家計の数字にそのまま残っている。


もっと詳しく

データ出典: 総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市)

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