長崎市のカステラ支出額は5,906円。2位の水戸市1,270円を4.7倍で引き離す独走。

長崎市のカステラ支出額は5,906円。2位の水戸市1,270円を4.7倍で引き離す独走。
家計調査で、これほど1位が独走している品目は珍しい。
直近3年(2023〜2025年)平均で、都道府県庁所在市及び政令指定都市のカステラ支出額を並べると、1位は長崎市の年間5,906円。2位の水戸市は1,270円で、差は4.7倍に達する。
全国平均は897円。長崎市はその6.58倍にあたる。最下位の青森市(449円)と比べると、13倍の差がある。
上位に並ぶ都市は、2位水戸市、3位富山市1,224円、4位津市1,222円、5位堺市1,220円。2〜5位までがほぼ同水準で、2位以下は互いに数十円の違いしかない。その中で、長崎市だけが別次元の位置にある。
1位と2位の差がこれほど開いている指標は珍しい
上位5都市を並べると、その差が際立つ。
| 順位 | 観測都市 | 3年平均支出額 | 長崎市比 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 長崎市 | 5,906円 | — |
| 2位 | 水戸市 | 1,270円 | 21.5% |
| 3位 | 富山市 | 1,224円 | 20.7% |
| 4位 | 津市 | 1,222円 | 20.7% |
| 5位 | 堺市 | 1,220円 | 20.7% |
長崎市の値は、2位以下のおよそ5倍。他の家計調査品目で、1位が2位の倍以上離れているのは、りんごの産地集中や日本酒の蔵元集中など、限られた例しかない。カステラの長崎一強は、統計の上ではかなり異例の構図だ。
なぜ長崎市だけが高いのか
カステラは16世紀にポルトガルから日本に伝わった南蛮菓子で、その入口が長崎だったとされる。以来、長崎では贈答品や土産物としてのカステラが地元文化の一部になってきた。
家計調査は、家庭での支出額を測る統計だ。観光客が買う土産物は直接反映されないが、地元住民が日常的にカステラを買う頻度と金額が、この数字に表れていると考えられる。贈答用、来客用、自宅用。用途の幅が長崎市では特に広いように見える。
理由1 — 地元メーカーの密度と価格帯の厚み。
福砂屋(1624年創業)、松翁軒(1681年創業)、文明堂(1900年創業)といった老舗から、地域密着のカステラ専門店まで、長崎市には多様なメーカーが集中している。家庭用・贈答用・自宅用で価格帯と商品サイズの選択肢が広く、日常的に買いやすい環境がある。
理由2 — 冠婚葬祭・法要での定番。
長崎県内では、冠婚葬祭や法要の贈り物として長崎カステラが定着している。地元住民の家計にとって、カステラは「日用食品に近い贈答菓子」として組み込まれている可能性がある。
理由3 — 「和三盆」「ザラメ」付きなどの差別化。
長崎のカステラは底にザラメを残す製法や、五三焼などの格付けで差別化されており、全国的なカステラ(長崎以外のメーカーのもの)とは価格帯が異なる。地元での購入単価が高めであることも、支出額を押し上げているとみられる。
最下位は青森市の449円
下位を見ると、長崎市の「独走」がいっそう際立つ。
| 順位 | 観測都市 | 3年平均支出額 | 長崎市比 |
|---|---|---|---|
| 49位 | 長野市 | 540円 | 9.1% |
| 50位 | 盛岡市 | 475円 | 8.0% |
| 51位 | 山形市 | 455円 | 7.7% |
| 52位 | 青森市 | 449円 | 7.6% |
最下位の青森市と長崎市の差は、5,906 ÷ 449 = 13.2倍。北東北の3都市が最下位グループに並び、カステラ購入の地域格差は同じ日本の中で一桁倍の開きを残している。
19年間の推移
2007〜2009年平均と2023〜2025年平均で比べると、全国平均は921円から897円へとほぼ横ばい(-2.6%の微減)。和菓子全般で支出額が下がっている長期トレンドのなかでは、カステラは比較的安定している品目に入る。
長崎市も同期間で6,248円から5,906円へと約-5.5%の微減。長崎の単年データを見ると、2007年が5,530円、2008年5,984円、2009年7,229円と年によって1,000円以上ぶれることがあり、3年平均で見ると6千円前後の高水準を長期維持してきたことがわかる。
全国平均と比べた倍率(全国平均比)は、2007〜2009年平均で約6.78倍、2023〜2025年平均で約6.58倍。長崎の独走幅はわずかに縮んだが、依然として2位以下を5倍以上引き離す独走構造は維持されている。
全52観測都市ランキング
家計調査では、都道府県庁所在市と政令指定都市の合計52観測都市を比較できる。3年平均ランキングには相模原市を含む全52都市を並べた。
| 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | 順位 | 名称 | 2023〜2025年平均 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 長崎市 | 5,906円 | 27 | 奈良市 | 832円 | |
| 2 | 水戸市 | 1,270円 | 28 | 岐阜市 | 830円 | |
| 3 | 富山市 | 1,224円 | 29 | 山口市 | 812円 | |
| 4 | 津市 | 1,222円 | 30 | 熊本市 | 797円 | |
| 5 | 堺市 | 1,220円 | 31 | 宮崎市 | 791円 | |
| 6 | 千葉市 | 1,168円 | 32 | 札幌市 | 779円 | |
| 7 | 京都市 | 1,147円 | 33 | 広島市 | 773円 | |
| 8 | 東京都区部 | 1,092円 | 34 | 前橋市 | 744円 | |
| 9 | 名古屋市 | 1,085円 | 35 | 仙台市 | 724円 | |
| 10 | 高松市 | 991円 | 36 | 和歌山市 | 719円 | |
| 11 | 高知市 | 991円 | 37 | 甲府市 | 717円 | |
| 12 | さいたま市 | 961円 | 38 | 大分市 | 699円 | |
| 13 | 神戸市 | 949円 | 39 | 福島市 | 685円 | |
| 14 | 岡山市 | 938円 | 40 | 鹿児島市 | 684円 | |
| 15 | 福井市 | 927円 | 41 | 宇都宮市 | 674円 | |
| 16 | 那覇市 | 923円 | 42 | 福岡市 | 667円 | |
| 17 | 徳島市 | 912円 | 43 | 大津市 | 662円 | |
| 18 | 佐賀市 | 880円 | 44 | 松山市 | 627円 | |
| 19 | 相模原市 | 876円 | 45 | 新潟市 | 607円 | |
| 20 | 浜松市 | 864円 | 46 | 秋田市 | 603円 | |
| 21 | 横浜市 | 861円 | 47 | 松江市 | 602円 | |
| 22 | 大阪市 | 860円 | 48 | 鳥取市 | 601円 | |
| 23 | 静岡市 | 856円 | 49 | 長野市 | 540円 | |
| 24 | 北九州市 | 845円 | 50 | 盛岡市 | 475円 | |
| 25 | 金沢市 | 842円 | 51 | 山形市 | 455円 | |
| 26 | 川崎市 | 833円 | 52 | 青森市 | 449円 |
長崎5,906円、水戸1,270円、青森449円
長崎市5,906円、水戸市1,270円、最下位の青森市449円。全国平均897円。1位と2位で4.7倍、1位と最下位で13倍。家計調査に400以上ある品目の中で、これほど1位が独走している例は珍しい。カステラが400年かけて長崎に根づいた物語が、現在の家計の数字にそのまま残っている。
もっと詳しく
データ出典: 総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用・二人以上の世帯・都道府県庁所在市及び政令指定都市)



