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豚肉の飼養1位・鹿児島は、 消費額では24位。

47ものがたり vol.3 — データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「畜産統計」

豚肉の飼養頭数1位は鹿児島県。115万頭を飼養する日本最大の養豚県だ。

では、豚肉の消費額1位はどこか。

鹿児島、と答えたくなる。でも違う。

1位は新潟県。年間38,131円。

鹿児島は33,325円で24位。飼養頭数ダントツ1位なのに、消費額は真ん中あたりだ。

家計調査は県庁所在市の世帯サンプルに基づくため、年ごとの変動が大きい。本記事では3年平均(2023〜2025年)でノイズを除いて比較する。

育てる県ほど、豚肉を買わない

飼養頭数と消費額のランキングを並べてみる。

飼養順位県名飼養頭数消費順位消費額
1位鹿児島115.3万頭24位33,325円
2位宮崎81.8万頭41位30,445円
3位北海道76.0万頭7位35,713円
4位群馬59.4万頭43位30,074円
5位千葉58.8万頭8位35,688円
6位岩手47.4万頭34位31,713円
7位茨城45.8万頭40位30,738円

宮崎が衝撃的だ。飼養2位の82万頭を抱えながら、消費は41位。全国平均すら下回っている。

群馬も同様。飼養4位なのに消費は43位。豚を大量に育てている県ほど、豚肉を買っていない

一方、消費1位の新潟は飼養16万頭で14位。2位の東京に至っては飼養わずか2千頭。りんごの「産地ほど消費しない」と同じ構図だ。

鹿児島は「牛と鶏」の県

なぜ鹿児島は豚肉を買わないのか。答えは鹿児島の食文化にある。

鹿児島は黒毛和牛の産地でもあり、鶏肉(さつま地鶏)の文化も根強い。豚は「育てて出荷するもの」であって、地元で消費する主力ではない。黒豚ブランドは全国に出荷され、地元のスーパーに並ぶ豚肉は必ずしも鹿児島産とは限らない。

宮崎も同じだ。養豚は産業であり、地元消費ではなく県外・海外への出荷が主力。豚は「稼ぐための家畜」なのだ。

豚肉消費は全国的に急増している

19年分の推移を見ると、全国的な豚肉シフトが見えてくる。

豚肉消費額の推移(注目4県 vs 全国平均)
年間支出額(円)/ 二人以上の世帯・県庁所在市

全国平均は2007年の23,923円から2025年の34,562円へ。19年で+44%

赤の新潟は常に全国平均を上回り、差を広げ続けている。一方、オレンジの鹿児島は全国平均と同じペースで増えているものの、途中で追い抜かれている。

注目すべきは紫の宮崎。2007年には2万円を切っていたが、2025年には3万円超へ。+36%の伸び。だが全国平均の伸びに追いつけず、相対的な順位はむしろ下がっている。

なぜ新潟が1位なのか

新潟は飼養14位(16万頭)。大産地ではない。

仮説1: 「豚汁文化」。新潟の冬は長い。鍋物、豚汁、角煮など、温かい豚肉料理の出番が多い。消費1位は冬の食卓が作っている可能性がある。

仮説2: 牛肉文化が弱い。関西や九州は牛肉文化が強い。新潟は東日本の豚肉圏に属し、肉といえば豚。タンパク源としての豚肉の存在感が他県より大きい。

実際、消費TOP5(新潟・東京・秋田・埼玉・福島)は全て東日本。「東は豚、西は牛」という日本の食文化の境界線がくっきり見える。

豚肉の19年

日本人は19年で豚肉への支出を4割以上増やした。背景には、鶏肉と並ぶコスパの良さ、しゃぶしゃぶや生姜焼きの定番化、そして輸入豚肉の増加がある。

だがその恩恵を最も受けているのは、豚を育てる県ではなく、豚を食べる県だ。鹿児島は115万頭を育てながら24位。新潟は16万頭で1位。

「産地=消費地」ではない。りんごの記事では生産1位の青森が消費で僅差だった。豚肉ではさらに極端に、飼養1位が消費24位。データが繰り返し語っているのは、「作る場所」と「使う場所」は別だという、シンプルだが見落としがちな事実だ。

データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「畜産統計」