豚肉の飼養1位・鹿児島は、 消費額では24位。
豚肉の飼養頭数1位は鹿児島県。115万頭を飼養する日本最大の養豚県だ。
では、豚肉の消費額1位はどこか。
鹿児島、と答えたくなる。でも違う。
1位は新潟県。年間38,131円。
鹿児島は33,325円で24位。飼養頭数ダントツ1位なのに、消費額は真ん中あたりだ。
家計調査は県庁所在市の世帯サンプルに基づくため、年ごとの変動が大きい。本記事では3年平均(2023〜2025年)でノイズを除いて比較する。
育てる県ほど、豚肉を買わない
飼養頭数と消費額のランキングを並べてみる。
| 飼養順位 | 県名 | 飼養頭数 | 消費順位 | 消費額 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 鹿児島 | 115.3万頭 | 24位 | 33,325円 |
| 2位 | 宮崎 | 81.8万頭 | 41位 | 30,445円 |
| 3位 | 北海道 | 76.0万頭 | 7位 | 35,713円 |
| 4位 | 群馬 | 59.4万頭 | 43位 | 30,074円 |
| 5位 | 千葉 | 58.8万頭 | 8位 | 35,688円 |
| 6位 | 岩手 | 47.4万頭 | 34位 | 31,713円 |
| 7位 | 茨城 | 45.8万頭 | 40位 | 30,738円 |
宮崎が衝撃的だ。飼養2位の82万頭を抱えながら、消費は41位。全国平均すら下回っている。
群馬も同様。飼養4位なのに消費は43位。豚を大量に育てている県ほど、豚肉を買っていない。
一方、消費1位の新潟は飼養16万頭で14位。2位の東京に至っては飼養わずか2千頭。りんごの「産地ほど消費しない」と同じ構図だ。
鹿児島は「牛と鶏」の県
なぜ鹿児島は豚肉を買わないのか。答えは鹿児島の食文化にある。
鹿児島は黒毛和牛の産地でもあり、鶏肉(さつま地鶏)の文化も根強い。豚は「育てて出荷するもの」であって、地元で消費する主力ではない。黒豚ブランドは全国に出荷され、地元のスーパーに並ぶ豚肉は必ずしも鹿児島産とは限らない。
宮崎も同じだ。養豚は産業であり、地元消費ではなく県外・海外への出荷が主力。豚は「稼ぐための家畜」なのだ。
豚肉消費は全国的に急増している
19年分の推移を見ると、全国的な豚肉シフトが見えてくる。
全国平均は2007年の23,923円から2025年の34,562円へ。19年で+44%。
赤の新潟は常に全国平均を上回り、差を広げ続けている。一方、オレンジの鹿児島は全国平均と同じペースで増えているものの、途中で追い抜かれている。
注目すべきは紫の宮崎。2007年には2万円を切っていたが、2025年には3万円超へ。+36%の伸び。だが全国平均の伸びに追いつけず、相対的な順位はむしろ下がっている。
なぜ新潟が1位なのか
新潟は飼養14位(16万頭)。大産地ではない。
仮説1: 「豚汁文化」。新潟の冬は長い。鍋物、豚汁、角煮など、温かい豚肉料理の出番が多い。消費1位は冬の食卓が作っている可能性がある。
仮説2: 牛肉文化が弱い。関西や九州は牛肉文化が強い。新潟は東日本の豚肉圏に属し、肉といえば豚。タンパク源としての豚肉の存在感が他県より大きい。
実際、消費TOP5(新潟・東京・秋田・埼玉・福島)は全て東日本。「東は豚、西は牛」という日本の食文化の境界線がくっきり見える。
豚肉の19年
日本人は19年で豚肉への支出を4割以上増やした。背景には、鶏肉と並ぶコスパの良さ、しゃぶしゃぶや生姜焼きの定番化、そして輸入豚肉の増加がある。
だがその恩恵を最も受けているのは、豚を育てる県ではなく、豚を食べる県だ。鹿児島は115万頭を育てながら24位。新潟は16万頭で1位。
「産地=消費地」ではない。りんごの記事では生産1位の青森が消費で僅差だった。豚肉ではさらに極端に、飼養1位が消費24位。データが繰り返し語っているのは、「作る場所」と「使う場所」は別だという、シンプルだが見落としがちな事実だ。
データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「畜産統計」