りんご産地で進む 「りんご離れ」の正体。
りんごの生産量1位は青森県。全国の6割、46万トンを生産する圧倒的な王者だ。
では、りんごの消費額1位はどこか。
答えは時代によって変わる。家計調査は各県の県庁所在市の世帯を対象にした調査だが、サンプル数が限られるため単年では数字がブレやすい。そこでこの記事では直近3年間(2023〜2025年)の平均値を使って比較する。
青森・長野・岩手が僅差で毎年入れ替わる。
3年平均では青森8,246円、長野8,220円、岩手8,095円。生産量では青森がダントツなのに、消費額では団子状態だ。
本当の問題は、順位じゃない
消費額の3年平均ランキングと、生産量を並べてみる。
| 順位 | 県名 | 3年平均 | 生産量 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 青森県 | 8,246円 | 46.3万t |
| 2位 | 長野県 | 8,220円 | 12.4万t |
| 3位 | 岩手県 | 8,095円 | 4.7万t |
| 4位 | 山形県 | 6,759円 | 4.2万t |
| 5位 | 秋田県 | 6,512円 | 2.5万t |
| 6位 | 福島県 | 6,122円 | 2.1万t |
| 7位 | 京都府 | 6,001円 | 24t |
上位6県はすべて東北+長野の産地圏。ここまでは想像通りだろう。
異様なのは7位の京都府。りんごをほぼ生産していない京都が、産地を脅かしている。
産地ほど「りんご離れ」が止まらない
しかし本当の問題は順位ではない。19年分のデータを追うと、産地で進む「りんご離れ」が見えてくる。
灰色の破線が全国平均。19年間でわずか3%の減少、ほぼ横ばいだ。
しかし産地は違う。紫の福島県が最も劇的。2009年に1万2千円を超えたピークから、3年平均で6,122円まで急落。半減だ。
| 県 | ピーク | 3年平均 | 下落率 |
|---|---|---|---|
| 福島 | 12,555円 | 6,122円 | -51% |
| 秋田 | 11,403円 | 6,512円 | -43% |
| 長野 | 13,040円 | 8,220円 | -37% |
| 岩手 | 12,449円 | 8,095円 | -35% |
| 青森 | 10,597円 | 8,246円 | -22% |
福島は半減。秋田は4割減。りんごの名産地ほど、りんご消費が急落している。
一方、全国平均は19年間で5,338円→4,842円(3年平均)と、わずか3%の減少。産地の落ち方と比べると、ほとんど横ばいに見える。
増えている県がある
全国平均がほぼ横ばいで、産地が急落しているなら、どこかで増えているはずだ。
47都道府県の19年間の変化率を3年平均ベースで調べると、13県でりんご消費が増えていた。
京都府の+36%が目を引く。りんごの生産量はわずか24トン。産地からはるか遠い京都が、19年間でりんご消費を3割以上増やした。
東京+14%、千葉+15%、宮崎+14%。温暖な地域、りんごとは縁のなさそうな県が並ぶ。
何が起きているのか
ここからは数字が語りきれない部分だが、いくつかの仮説は立てられる。
産地で減っている理由。りんごが身近すぎるのだ。もらう、庭にある、直売所で安く買える。家計調査は「購入額」を計測している。タダでもらったりんごは統計に出ない。産地ではりんごに「お金を使わなくなった」のであって、食べなくなったわけではない可能性がある。
非産地で増えている理由。ブランドりんごの存在が大きいだろう。「シナノゴールド」「ふじ」などの高級品種がスーパーに並ぶようになった。1個300円のりんごを週に1回買えば、年間で1万5千円以上になる。健康志向の高まりもあるかもしれない。
京都の突出した伸びは、贈答文化と関係があるかもしれない。冬のギフトとしてりんごを買う習慣がある地域では、1箱数千円の購入が年間消費額を押し上げる。
りんごの40年
視野をさらに広げてみる。
りんごの親カテゴリである「果物」の消費額は、40年間で大きく変動している。1985年に月額3,783円だった果物の支出は、2005年に2,733円まで落ちた。28%減。しかしそこから反転し、2025年には回復基調にある。
果物全体では「V字回復」が起きている。だがその中身は変わった。りんごやみかんは減り、ぶどう、いちご、バナナが増えた。日本の果物消費の地図は、この40年で静かに塗り替えられている。
データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「作物統計」