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りんご産地で進む 「りんご離れ」の正体。

47ものがたり vol.1 — データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「作物統計」

りんごの生産量1位は青森県。全国の6割、46万トンを生産する圧倒的な王者だ。

では、りんごの消費額1位はどこか。

答えは時代によって変わる。家計調査は各県の県庁所在市の世帯を対象にした調査だが、サンプル数が限られるため単年では数字がブレやすい。そこでこの記事では直近3年間(2023〜2025年)の平均値を使って比較する。

青森・長野・岩手が僅差で毎年入れ替わる。

3年平均では青森8,246円、長野8,220円、岩手8,095円。生産量では青森がダントツなのに、消費額では団子状態だ。

本当の問題は、順位じゃない

消費額の3年平均ランキングと、生産量を並べてみる。

順位県名3年平均生産量
1位青森県8,246円46.3万t
2位長野県8,220円12.4万t
3位岩手県8,095円4.7万t
4位山形県6,759円4.2万t
5位秋田県6,512円2.5万t
6位福島県6,122円2.1万t
7位京都府6,001円24t

上位6県はすべて東北+長野の産地圏。ここまでは想像通りだろう。

異様なのは7位の京都府。りんごをほぼ生産していない京都が、産地を脅かしている。

産地ほど「りんご離れ」が止まらない

しかし本当の問題は順位ではない。19年分のデータを追うと、産地で進む「りんご離れ」が見えてくる。

りんご消費額の推移(産地4県 vs 全国平均)
年間支出額(円)/ 二人以上の世帯・県庁所在市

灰色の破線が全国平均。19年間でわずか3%の減少、ほぼ横ばいだ。

しかし産地は違う。紫の福島県が最も劇的。2009年に1万2千円を超えたピークから、3年平均で6,122円まで急落。半減だ。

ピーク3年平均下落率
福島12,555円6,122円-51%
秋田11,403円6,512円-43%
長野13,040円8,220円-37%
岩手12,449円8,095円-35%
青森10,597円8,246円-22%

福島は半減。秋田は4割減。りんごの名産地ほど、りんご消費が急落している。

一方、全国平均は19年間で5,338円→4,842円(3年平均)と、わずか3%の減少。産地の落ち方と比べると、ほとんど横ばいに見える。

増えている県がある

全国平均がほぼ横ばいで、産地が急落しているなら、どこかで増えているはずだ

47都道府県の19年間の変化率を3年平均ベースで調べると、13県でりんご消費が増えていた

19年間の変化率(増加TOP5 vs 減少TOP5)
3年平均ベース: 2007-2009年 → 2023-2025年

京都府の+36%が目を引く。りんごの生産量はわずか24トン。産地からはるか遠い京都が、19年間でりんご消費を3割以上増やした。

東京+14%、千葉+15%、宮崎+14%。温暖な地域、りんごとは縁のなさそうな県が並ぶ。

何が起きているのか

ここからは数字が語りきれない部分だが、いくつかの仮説は立てられる。

産地で減っている理由。りんごが身近すぎるのだ。もらう、庭にある、直売所で安く買える。家計調査は「購入額」を計測している。タダでもらったりんごは統計に出ない。産地ではりんごに「お金を使わなくなった」のであって、食べなくなったわけではない可能性がある。

非産地で増えている理由。ブランドりんごの存在が大きいだろう。「シナノゴールド」「ふじ」などの高級品種がスーパーに並ぶようになった。1個300円のりんごを週に1回買えば、年間で1万5千円以上になる。健康志向の高まりもあるかもしれない。

京都の突出した伸びは、贈答文化と関係があるかもしれない。冬のギフトとしてりんごを買う習慣がある地域では、1箱数千円の購入が年間消費額を押し上げる。

りんごの40年

視野をさらに広げてみる。

りんごの親カテゴリである「果物」の消費額は、40年間で大きく変動している。1985年に月額3,783円だった果物の支出は、2005年に2,733円まで落ちた。28%減。しかしそこから反転し、2025年には回復基調にある。

果物全体では「V字回復」が起きている。だがその中身は変わった。りんごやみかんは減り、ぶどう、いちご、バナナが増えた。日本の果物消費の地図は、この40年で静かに塗り替えられている。

データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 農林水産省「作物統計」