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アイスに一番お金を使う県、 暑い県じゃなかった。

47ものがたり vol.2 — データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 気象庁「過去の気象データ」

アイスクリームに一番お金を使う県はどこか。

暑い県、と答えたくなる。沖縄、鹿児島、宮崎あたりを想像する人が多いだろう。

でも違う。

1位は福島県。年間14,409円。

沖縄は最下位の47位。年間9,755円。1位の福島より5千円近く少ない。

ただし家計調査の単年データはサンプル数の制約でブレが大きい。この記事では直近3年(2023〜2025年)の平均で安定した傾向を見る。

暑い県ほどアイスを食べない

3年平均のランキングと年平均気温を並べてみる。

順位県名3年平均年平均気温
1位福島県14,409円14.8℃
2位山形県14,068円13.4℃
3位石川県13,889円16.3℃
4位埼玉県13,886円16.8℃
5位栃木県13,596円15.7℃
6位岩手県13,587円12.1℃
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45位兵庫県10,820円18.0℃
46位福岡県18.3℃
47位沖縄県9,755円24.0℃

上位には福島、山形、岩手など東北勢が並ぶ。6位の岩手は年平均気温12.1℃、全国で3番目に寒い県だ。

一方、最も暑い沖縄は最下位。気温24.0℃の南国が、気温12.1℃の岩手に4千円近く負けている。

47都道府県のアイス消費額と年平均気温の相関係数はr = −0.44。弱い逆相関だ。つまり暑い県ほど、アイスにお金を使わない傾向がある。

全県でアイスが爆増している

しかしもっと驚くのは、19年間の推移だ。

アイス消費額の推移(注目4県 vs 全国平均)
年間支出額(円)/ 二人以上の世帯・県庁所在市

灰色の全国平均を見てほしい。2007年の7,081円から2025年の13,139円へ。19年間で+85%。ほぼ倍増だ。

りんごがほぼ横ばいだったのとは対照的に、アイスは全県で爆発的に増えている。47都道府県すべてで増加。減った県はゼロ。

グループアイス3年平均平均気温
寒い県(15℃未満・8県)12,966円13.1℃
暑い県(17℃以上・23県)12,030円18.2℃
全国平均12,338円16.3℃

寒い県のほうが約1,000円多い。直感に反する。

増加率ランキングに驚く

19年間の変化率を見ると、全県プラスの中でも差がある。

19年間の変化率(増加TOP5 vs 増加BOTTOM5)
3年平均ベース: 2007-2009年 → 2023-2025年

和歌山県の+118%。19年で消費額が2倍以上になった。鳥取+96%、沖縄+95%、北海道+94%と続く。

注目すべきは沖縄の+95%。最下位なのに伸び率は全国3位。かつてアイスに4,414円しか使わなかった沖縄が、今は9,755円。それでもまだ最下位なのだから、全国の伸びがいかに凄まじいかがわかる。

なぜ暑い県ほどアイスを買わないのか

いくつかの仮説がある。

仮説1: アイスの「特別感」。暑い県ではアイスは日常品だ。コンビニで100円のアイスを気軽に買う。寒い県ではアイスは「ちょっとした贅沢」。ハーゲンダッツやご当地アイスなど、単価の高いものを選ぶ傾向があるのかもしれない。

仮説2: 「こたつアイス」文化。東北や北陸では、暖房の効いた暖かい部屋でアイスを食べる文化がある。冬のアイス消費が意外に多く、年間を通じた消費額を押し上げている可能性がある。

仮説3: 購入チャネルの違い。沖縄ではかき氷やジェラートなど、家計調査に計上されにくい形でアイスを消費しているかもしれない。外食や屋台のアイスは「外食費」に分類され、ここには含まれない。

アイスの19年

アイスクリーム市場は2007年から右肩上がりを続けている。コンビニのアイス売場の拡大、プレミアムアイスの台頭、「大人向けアイス」の登場。日本人はこの19年で、アイスの食べ方を変えた。

かつてアイスは「夏の食べ物」だった。今は「通年の嗜好品」だ。そしてその変化は、暑い県より寒い県で、より劇的に起きている

福島の年間14,409円は、月に1,200円。週に300円。週に1回、ちょっといいアイスを買う。それが日本一のアイス県の姿だ。

ちなみにアイスの+65%という伸びは、40年で日本の食卓から消えたものの記事で見た「まんじゅう−71%→チョコ・アイスへ」という入れ替わりの一端でもある。和菓子が消え、洋菓子が伸びる。その変化の先頭にアイスがいる。

データ出典:総務省統計局「家計調査」(2007〜2025年・3年平均使用)/ 気象庁「過去の気象データ」