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ビール消費1位、 沖縄でも北海道でもない。

47ものがたり vol.5 — データ出典:総務省統計局「家計調査」(1985〜2025年・3年平均使用)

ビール消費額1位はどこか。

沖縄のオリオンビール、北海道のサッポロビール。ビールが似合う土地は多い。

でも1位は意外な県だ。

1位は青森県。年間18,770円。

2位は岩手(18,264円)、3位は広島(16,098円)。北海道は6位(15,615円)、沖縄は15位(13,324円)にとどまる。

このシリーズではおなじみだが、単年のブレを避けるため3年平均(2023〜2025年)で比較している。

ビール王国は東北だった

ランキングと気温を並べてみる。

順位県名3年平均年平均気温
1位青森県18,770円12.1℃
2位岩手県18,264円12.1℃
3位広島県16,098円17.5℃
4位長野県15,800円13.4℃
5位秋田県15,661円13.3℃
6位北海道15,615円10.6℃
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15位沖縄県13,324円24.0℃
::::
46位高知県8,455円18.1℃

TOP5のうち4県が東北+長野。気温12〜13℃の寒冷地がビール消費を牽引している。

意外なのは最下位圏だ。高知が46位(8,455円)。「酒豪県」として有名な高知が、ビールでは最下位レベル。高知は日本酒と焼酎の県であり、ビール文化ではなかった。

ビールは40年で半減した

しかし順位以上に衝撃的なのは、ビール全体の凋落だ。

ビール消費額の推移(注目4県 vs 全国平均)
年間支出額(円)/ 二人以上の世帯・県庁所在市

灰色の全国平均を見てほしい。2007年の17,218円から2025年の12,636円へ。19年で27%減。40年スパンで見ると23,562円→12,718円で−46%。ほぼ半減だ。

発泡酒やチューハイに客を奪われ、若者のビール離れが進んだ結果だ。

それでもビールが伸びている県

全国的にビールが沈む中、逆に増えている県がある。

19年間の変化率(注目県)
3年平均ベース: 2007-2009年 → 2023-2025年

青森が+33%。全国が3割近く減る中、青森だけは3割増えた。沖縄も+18%と健闘している。

一方、岐阜−44%、奈良−43%、大分−40%と、西日本の落ち込みが激しい。

「酒の地図」は気温で決まる

酒類全体を40年で見ると、構造変化がはっきりする。

酒の種類40年変化強い地域
ビール−46%東北・北海道(寒冷地)
焼酎+62%九州・沖縄(温暖地)
ワイン+272%都市部(東京・神奈川)

ビールは寒い県で強く、焼酎は暑い県で強い。ワインは気温に関係なく都市部で伸びている。

日本の「酒の地図」は、気温と都市化の2軸で描かれている。

青森のビール愛

青森がビール1位である理由は単純ではない。3つの仮説がある。

仮説1: 東北の中の「非日本酒県」。秋田、山形、新潟は清酒消費で全国TOP5に入る日本酒王国だ。だが青森は違う。日本酒よりビールを選ぶ東北の異端児。同じ東北でも酒の選び方が分かれる。

仮説2: 「短い夏」の集中消費。青森の夏は短いが暑い。ねぶた祭りの時期に消費が集中する。短期間に一気に飲むから、年間消費額が跳ね上がる。冬も暖房の効いた部屋でビールを飲む「こたつビール」文化がある。アイスの記事で見た「こたつアイス」と同じ構造だ。

仮説3: 外食より家飲み。青森は外食費が全国的に低い。居酒屋で日本酒を飲むより、家でビールを開ける。スーパーでケース買いする文化が消費額を押し上げている可能性がある。

青森のビール消費18,770円は、全国平均の1.5倍。ビールが全国で半減する中、青森だけが+33%で逆行している。全国が「ビール離れ」を起こす中で、青森は「ビール愛」を深めている。

データ出典:総務省統計局「家計調査」(1985〜2025年・3年平均使用)